太陽光や風力から潮流発電まで、エネルギーが持続する「環境未来島」へエネルギー列島2014年版(28)兵庫(1/2 ページ)

瀬戸内海に浮かぶ兵庫県の淡路島では、エネルギーや食料を自給自足する「あわじ環境未来島構想」を推進中だ。豊富な日射量を生かしたメガソーラーに加えて、陸上と洋上の風力発電、太陽熱とバイオマスを組み合わせたバイナリー発電、さらには近海で潮流発電の実証プロジェクトも始まる。

» 2014年10月28日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 日本の島で7番目に大きい淡路島には山地と平野があって、周囲を海に囲まれていることから、日本の風土を集約した「ミニ日本」の要素がある。そうした特性を生かして持続する地域社会を目指す「あわじ環境未来島構想」に2011年から精力的に取り組んでいる。

 環境未来島の第1のテーマがエネルギーで、2050年までに自給率を100%に高めるのが目標だ。南北が50キロメートル、東西が20キロメートルの島内と周辺の海域では、再生可能エネルギーによる発電プロジェクトが続々と始まっている(図1)。

図1 「あわじ環境未来島構想」の取り組み状況。出典:兵庫県、洲本市、南あわじ市、淡路市

 淡路島は年間の日照時間が2100時間を超えて、国内でも有数の太陽光発電に適した環境にある。すでに島内の18カ所でメガソーラーが運転を開始したのに加えて、発電規模が30MW(メガワット)以上の大規模なメガソーラーを建設する計画が2カ所で進行中だ。

 そのうちの1つはユーラスエナジーグループが島の北部に建設中の「津名(つな)東太陽光発電所」である。建設用地は関西国際空港を埋め立てるための土砂を採取した60万平方メートルに及ぶ跡地で、15万枚を超える太陽光パネルを設置する(図2)。発電能力は33.5MWに達して、関西では最大の規模になる。

図2 「津名東太陽光発電所」の完成イメージ。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 年間の発電量は4000万kWh程度になる見込みで、一般家庭で1万1000世帯分の電力を供給する計画だ。運転開始は2015年7月を予定している。この発電所を含めて淡路島で運転中と建設中のメガソーラーを合わせると、合計26カ所で110MWの発電規模に拡大する。

 同じ太陽でも熱を利用した発電設備の実証プロジェクトが島の南端で進んでいる。太陽熱と木質バイオマスを組み合わせたシステムで、地熱発電で多く使われるバイナリー発電方式を利用する点が特徴である。東芝と神戸製鋼所が環境省の補助事業で2014年8月に運転を開始した。

 このシステムでは雨どいのような形をした細長い曲面鏡で太陽熱を集める。大型と小型の2種類の集熱装置から太陽熱を蒸発器に送り込み、発生させた蒸気を使ってバイナリー方式で発電する(図3)。さらに太陽熱が不足した場合の補助熱源として、淡路島産の竹のチップなどを燃料にバイオマス熱を組み合わせる。地域の資源を生かしたハイブリッド型の発電設備である。

図3 風力・太陽熱・バイオマスを組み合わせたバイナリー発電設備。出典:東芝、神戸製鋼所、兵庫県

 そればかりではない。島内で稼働中の風力発電所とも連系させて、風速や風向によって変動する風力発電の出力を平準化することに取り組む。風力発電の細かく変動する出力をカットして、その電力をヒーターで熱に変えてバイナリー発電機に供給する仕組みだ。再生可能エネルギーの普及に向けて大きな課題になっている太陽光や風力の出力変動を抑制する試みの1つである。

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