風車の世界記録、24時間で19.2万kWh生む自然エネルギー

三菱重工業は2014年10月、風車の世界記録を達成したと発表した。同社とデンマークのヴェスタスが合弁で設立した企業が取り組む試験の結果である。出力8MWの風車が24時間、定格出力そのままに発電した形だ。

» 2014年10月30日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 三菱重工業は2014年10月、同社が参画するプロジェクトにおいて単体の風車が、風力発電の1日発電量の世界記録を達成したと発表した。

 出力8000kWの風車を利用して、2014年10月6日から同7日の24時間で19万2000kWhの発電を記録した。これは設備利用率に換算すると100%に相当する。

 同社はデンマークのヴェスタス(Vestas Wind Systems)と合弁で洋上風力発電設備のみを扱う企業MHI Vestas Offshore Windを設立している。同社は定格出力8000kWhの風力発電試験機「V164-8.0MW」のプロトタイプ機(関連記事、図1)*1)の試験を継続している。今回の記録はこのV164-8.0MWが達成したもの。V164-8.0MWは型式認定取得を目指している世界最大の風力発電設備だという。

*1) ローターの直径は160m。タワー高さ(ハブ高さ)は140m(商用機では約105m)、全高は220m(商用機では約187m)。ナセル寸法は24m×12m×7.5m、ナセル重量は約390トン。

図1 「V164-8.0MW」プロトタイプ機の外観 出典:三菱重工業

 V164-8.0MWの試験はデンマークのユトランド半島北東部ウスタイル(Østerild)にある大規模風力タービンのためのデンマーク国立テストセンターで行い、試験場を所有しているデンマーク技術大学が記録を計測した。「テストセンターは風況がよく、ドイツSiemensや韓国Samsungなどが風車を設置している」(三菱重工業)。

 MHI Vestas Offshore WindのCEOであるJens Tommerup氏は発表資料の中で、2014年1月にプロトタイプ機を設置後、90%の稼働率で運転を継続しており、技術の質と試験チームの技能の高さを反映した結果だとしている。

三菱重工業の風車は2系列に分かれる

 「V164-8.0MWの型式認定を2014年度中に取得し、2015年後半に商用機を量産モデルとして投入する予定だ」(三菱重工業)。

 三菱重工業の風車は2系列に分かれる。まずはMHI Vestas Offshore Windで実施する洋上事業だ。「製品ラインは(出力3MWの)V112-3.0MWと、今回のV164-8.0MWだ」(同社)。

 もう1つは三菱重工業が単独で取り組む事業。「当社が開発中の新型ドライブトレイン(DDT:Digital Displacement Transmission)は、現時点ではVestas Wind Systemsとの合弁事業には入っていない。英国のハンターストンに建設した陸上実証機で試験中である他、今後、福島県沖で実証研究を進める」(三菱重工業)。

 DDTでは油圧を用いたデジタル可変容量制御を取り入れており、風の変動による回転ムラに対応しやすい。ナセル内部に配置する増速機が不要になるため、大型化にも向き、信頼性が高くなるという。

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