下水再生水の熱を給湯と空調に、ショッピングモールで7%の省エネ効果スマートシティ

大阪府の堺市は下水処理場で再生した水の熱を利用する日本で初めてのエネルギー事業に取り組む。再生水の熱を給湯に使った後に、温度が下がった水を冷房に利用する。冬は暖房だけに利用して、年間で7.2%の省エネ効果を発揮する見込みだ。イオンが2016年に開業する商業施設に導入する。

» 2014年10月31日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 下水を処理した後の再生水は工業用水や農業用水などに利用することが多い。ろ過処理などを経た再生水は夏に冷たく、冬に温かいのが特徴だ。この再生水の温度を熱源に利用して、給湯と空調の両方を可能にするシステムの導入計画が大阪府の堺市で11月から始まる。

 堺市が運営する「三宝(さんぽう)下水処理場」で処理した再生水を、1.5キロメートルほど離れた場所のショッピングモールまで送って利用する計画だ(図1)。ショッピングモールはイオングループが2016年3月に開業予定の「イオンモール堺鉄砲町」である。さらに熱を利用した後の再生水は近くを流れる「せせらぎ水路」に放流して安定した水量と水質の確保に生かす。

図1 下水再生水の熱利用システムを導入する地域。出典:堺市

 1年のうち夏には再生水の温熱を給湯設備の熱源に利用してから、温度が下がった状態で空調設備(冷房)の熱源に利用する(図2)。下水の再生水を給湯と空調の両方の熱源に連続して利用する試みは日本で初めてである。冬は再生水の温熱を空調(暖房)だけに利用する。その後の再生水はショッピングモールのトイレ洗浄水などにも活用する予定だ。

図2 下水再生水を利用する流れ。出典:堺市

 給湯や空調には熱交換器によるヒートポンプの仕組みを採用する(図3)。夏は再生水の温度が30度程度になり、熱交換器で給湯に利用した後は29度以下に下がる。温度が下がった水を空調の熱交換器に送って冷房に利用すると、33度を超えるくらいまで上昇する。やや温かくなった水は水路やトイレ用に供給して循環させることができる。

図3 熱利用システムの構成と運転フロー(夏の夜間の蓄熱運転)。出典:堺市、イオンモール、関電エネルギーソリューション

 堺市はイオングループと関西電力グループを事業のパートナーにして、イオンモール堺鉄砲町が開業する2016年3月までに一連のシステムを完成させる予定だ(図4)。ショッピングモールに下水再生水の熱利用システムを導入することで、通常の場合と比べて年間に7.2%の省エネ効果を見込んでいる。

図4 「イオンモール堺鉄砲町」の完成イメージ(上)、「内川緑地せせらぎ水路」(下)。出典:堺市、イオンモール

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