電力の小売全面自由化と合わせて全国各地の需給バランスを維持するためには、小売事業者と発電事業者が30分単位の需給計画などを広域機関に提出する必要がある。提出方法は3種類から選ぶことができるが、いずれの場合でもデータを暗号化して送信することが求められる。
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電力システム改革の第1段階を担う「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)の重要な役割の1つは、すべての小売事業者と発電事業者の年間計画などをとりまとめて、全国レベルの需給調整を効率的に推進することにある。その作業に欠かせないシステムの開発が2014年10月から始まった。
各事業者が広域機関に計画を提出する方法は3種類ある。その中で最も効率的な第1の方法は、広域機関のシステムと連携してデータを送信する形態だ。一般的に使われる「Excel」などで作成したデータを「XML」と呼ぶ形式に変換してから、通信プロトコルの「JX手順」を使ってインターネット経由で送信する(図1)。
広域機関のシステムには「計画受付HPサーバ」が用意されて、データを処理した結果は自動的に事業者のシステムに送られる仕組みになる。事業者の側でもデータの送受信に必要なシステム連携機能を整備する必要がある。
これに対して第2の方法は広域機関の計画受付HPサーバを使って、Webブラウザからデータを入力することができる。データの形式は同様にXMLに変換する必要があるが、その変換機能を含めてExcelの状態から入力を完了するまでの支援ツールを広域機関が提供する予定だ。データの処理結果はメールで事業者に送られる。
さらに第3の方法として、計画受付HPサーバのWebブラウザから直接データを入力することも可能にする。最もシンプルな方法だが、入力ミスなどが起こりやすく、安全な方法とは言いがたい。この場合も処理した結果は広域機関からメールで送られてくる。
3種類の方法いずれの場合でも、インターネットを利用できる環境を用意する必要がある。それに加えて「電子証明書」を取得したうえで、「SSL」と呼ぶプロトコルを使ってデータを暗号化して送受信することが求められる(図2)。
すでに広域機関のシステム開発は2014年10月から始まっていて、2015年12月までに試験を完了する予定だ(図3)。それと並行して事業者のシステムと接続した対向試験を実施する。小売の全面自由化が始まる2016年4月1日に間に合わせるためには、事業者側の準備も急ぐ必要がある。
広域機関のシステムと連携させる第1の方法を採用する場合には、2015年10月をめどにシステムの整備を完了することが望ましい。さらに電子証明書の取得も2015年12月までに済ませておくのが安全だ。広域機関に提出するデータの様式(フォーマット)などの詳細な仕様は2014年12月に公表することになっている。
実際に事業者が提出しなくてはならない計画には、年間の供給計画のほか、月次・週次・日次の需給計画や発電計画などがある。特に需給計画や発電計画は翌日と当日の30分単位のデータを1日に1回の頻度で提出する必要がある(図4、図5)。販売先や発電所の数が多い事業者にとっては、広域機関のシステムと連携させたデータ送信方法が不可欠になってくる。
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