オランダの夢「太陽光道路」、無線で車へ電力送る?蓄電・発電機器(1/2 ページ)

オランダで太陽電池を埋め込み、発電する世界初の道路「SolaRoad」が完成した。100m当たり一般家庭3世帯分の電力が得られるという。当初は道路の照明や家庭への電力供給を試みる。最終的な目標は自給自足可能な交通システムの基盤となることだ。

» 2014年11月14日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 2014年11月12日、オランダで世界初の道路「SolaRoad」が完成、開通式が開催された。太陽電池セルを組み込んだ部材を利用して作られたという意味で世界初である。アムステルダムの北西約15kmに位置し、長さは100m*1)。3年間の実証実験の形で運用されることになっている。

 実証実験の計画では、発電能力は道路の長さ100m当たり一般家庭3世帯分。実験開始時は発電した電力を系統にそのまま接続している。設置前の見積もりによれば、寿命(20年)以内に投資を回収できるという。現在は投資回収期間を15年以内に短縮することを目指している。

*1) Google Mapに緯度と経度(52.493875, 4.767134)を入力すると、SolaRoadの位置(工事前)が分かる。

図1 完成したSolaRoadを走るオランダの自転車 出典:SolaRoad

なぜ道路を使うのか

 オランダは大都市における交通システムに革命を起こそうとしている。首都アムステルダム市は2040年までに段階的に私有車を全て電気自動車化しようという計画を打ち出している(関連記事)。その電力を生み出すのに最も自然な方法は何か。車両の下に長く伸びる道路だ。道路を「無駄に」照らしている太陽光を利用する。オランダでの議論からは離れるものの、このようなシステムは系統との関係が希薄になる。日本で現在論じられているような、系統に悪影響を与えるという課題も同時に解決する。

 SolaRoadにつながるアイデアを2009年に打ち出したのは、オランダ応用科学研究機関(TNO)である。オランダの年間総消費電力は約1200億kWh。発電に適した建物の屋根全てに太陽電池を設置すると、総量だけを考えた議論ではあるものの、このうち4分の1を賄うことができる。さらに太陽電池を増やそうとすると、道路が適切であるという。オランダの道路総延長距離は約14万km。面積に換算すると450km2になる。これは屋根の総面積よりも広い。

 首都アムステルダムが位置する北ホラント州と、道路関連技術を得意とするオランダOoms Civiel、技術サービスプロバイダーである同Imtech Traffic&InfraがTNOのアイデアに賛同し、SolaRoadコンソーシアムを形成した。州政府が主に資金を提供した。5年間で350万ユーロを投じたという。Ooms Civielは道路に設置するパネル関連を扱う。同社は道路から熱や冷熱を取り出すソリューションを既に提供している。Imtech Traffic&Infraは用途開拓や技術の方向性の提案を担う。

 道路から取り出した電力を(無線で)電気自動車に送り込む。これはSolaRoadにとっての最終的な目標だ。そこに至る前の段階では、系統に接続する、道路照明に利用する、道路に隣接する家屋に供給するといったさまざまな用途があるのだという。

 実証実験では一般道路ではなく、自転車専用道路を対象とした。自転車専用道路は一般道路と比較して加重負荷が少ない他、路面を取り外して実証実験中に改良を加えやすいためだ。なお、オランダは自転車保有率が世界一(約110%)であり、自転車専用道路が約1万5000kmも延びている。一般道路に展開する前に、実証された技術を展開する場が広がっている。

どのような部材が必要なのか

 SolaRoladの基本単位は3.5m×2.5mのコンクリートパネルだ。厚さははっきりと公表されていないものの、写真から20cm前後だと分かる(図2)。コンクリートパネルの表面は端面付近を除き、厚さ1cmの強化ガラスで覆われている。その内部に結晶シリコン太陽電池セルが配置されており、下面の強化ガラスとの間に挟まれている。つまり一般的な太陽電池モジュールをコンクリートとガラスで作り上げた形だ。SolaRoadによれば、現時点では道路用の特別な太陽電池セルを開発する必要はないのだという。

 図2を注意深く眺めると、中央の人物の前後で表面の様子が違う。SolaRoadでは「2車線」のうち、図手前の1車線のみに太陽電池を組み込んでいるからだ。同じ道路で従来と似た路面と、新しい路面の影響を比較しやすい。実証実験のコストも低くなる。

図2 完成した発電コンクリートパネル(クリックで拡大) 出典:SolaRoad
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