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» 2014年11月25日 09時00分 UPDATE

和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(6):なぜ高い水素の設備、現場の努力を生かすには (1/4)

燃料電池自動車(FCV)と水素ステーションの関係は鶏と卵だ。2014年12月に国内初のFCVが販売される。次は水素を充填できる場所を増やすことが課題だ。水素ステーションの設置数がなかなか伸びない理由は幾つかある。その1つが、設置コストだ。ガソリンスタンドの数倍というコストを下げるにはどうすればよいのか。水素製造装置や圧縮機を製造する企業に、現在の取り組みと課題について聞いた。

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),スマートジャパン]

 一般向けの燃料電池自動車(FCV)の販売が2014年12月からいよいよ始まる。国内ではトヨタ自動車が先行し、ホンダや日産自動車が続く。次は水素ステーションの普及だ。自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社の共同計画は、2015年までに4大都市圏と高速道路を中心に100カ所程度の水素ステーションを立ち上げるというもの。だが、計画からの遅れが目立つ。遅れの理由の1つが、立ち上げに必要な費用が高額であること。

 だが、コストダウンのための課題が分かりにくい。連載第4回では、水素ステーションの供給企業を取り上げた。今回は水素製造装置や主要部品である圧縮機の開発・販売に取り組んでいる企業に水素ステーションの課題やコストダウンの手法について聞いた。

 三菱化工機は水素製造装置を製造する他、水素ステーションの機械設備一式を供給している企業だ。同社の新事業本部経営企画グループHyGeiaチーム担当部長の山崎明良氏に、現在の取り組みや今後の課題について話を聞く機会を得た(図1)。

yh20141125Wada06_MrYamazaki_400px.jpg 図1 三菱化工機の山崎明良氏

水素製造装置を数多く手掛ける

和田憲一郎氏(以下、和田氏) これまでの取り組みについて教えて欲しい。

山崎氏 当社は水素製造装置の製作メーカーである。水素の製造方法は水蒸気改質法だ*1)。事業のきっかけは1964年、都市ガスの原料として石炭ガス、石油改質ガスが主に使われていた時代だ。高圧連続式の都市ガス製造装置の1号機を、東京ガスに納入した。その後、1990年代には産業用の水素需要向けに製造能力が1時間当たり数百Nm3の中型装置*2)、また製造能力数十Nm3/hの小型装置の販売も開始した。

*1) 水蒸気改質法とは、石炭や炭化水素に水蒸気を加えて一酸化炭素(二酸化炭素)と水素を得る手法。
*2) 気体は温度と圧力によって体積が変わるため、1気圧0度のときの体積であることをm3(立方メートル)の前に「N」(ノルマル)を付けて表す。

 2002年度に始まった水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC:Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)が次の事業のきっかけとなった。小型装置の改良を進め、JHFCの実証事業のために計画された水素ステーションへの納入を開始した。2003年から「JHFC横浜・旭水素ステーション」(横浜市旭区)*3)の機械設備一式建設を皮切りに、水素ステーション建設の事業も開始した。その後は、「JHFC千住水素ステーション」(東京都荒川区)、「JHFC秦野水素ステーション」(神奈川県秦野市)、「羽田水素ステーション」(東京都大田区)、「とよたエコフルタウン水素ステーション」(愛知県豊田市、図2)、「神の倉水素ステーション」(名古屋市緑区)など、オンサイト水素ステーション(オンサイト方式)への水素製造装置の納入、建設工事を継続。水素ステーションに関する知見を蓄えてきた。

 現在は、オンサイト方式だけで無く、オフサイト水素ステーション(オフサイト方式)の建設も手掛けている。

*3) 炭化水素であるナフサを原料とし、水蒸気改質と圧力スイング吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)を利用して水素を製造する。水素製造能力は50Nm3/h)。

yh20141125Wada06_ToyotaEFT_567px.jpg 図2 とよたエコフルタウン水素ステーション 出典:三菱化工機

和田氏 優位性があるという水素製造装置は、オフサイト方式の場合には不要だ。オンサイト方式とオフサイト方式について、今後どのように進むとみているのか。

山崎氏 現在は確かにオフサイト方式が主流になっている。オンサイト方式の場合、水素製造装置の分だけ設備費用が高くなることは避けられない。だが、オフサイト方式の場合、圧縮水素などを外部から供給しなければならない。外部から供給する水素と、ステーションに設置した装置で製造する水素との価格の比較となる。

 このため、オンサイト方式だからといって「高い設備費=高価格の水素」とはならない。外部から供給する水素の輸送距離や水素ステーションの稼働率などさまざまな要素がコストに関係するため、単純な比較はできない。

 都市ガス会社が水素ステーションを運営しようとする場合は、ガスの導管網を利用して都市ガス(天然ガス)を原料としたオンサイト方式を指向するのが自然だろう。現在、水素の出荷場所は沿岸部に多い。将来、FCVの販売が拡大し、内陸部にまで水素ステーションを設置するようになると、輸送距離の制約からオンサイト方式の建設が増えると考えている。

 当社が「マザー&ドーター方式」と呼ぶ方式もありうる。少し大型のオンサイト方式のステーションを内陸部に設置し、周辺の水素ステーションへも水素を輸送する方式だ。

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