発電コスト最小の太陽光、産油国ドバイに建設自然エネルギー(1/2 ページ)

ドバイ電力水道公社は、2015年1月15日、200MWの太陽光発電所の設計・調達・建設先として、サウジアラビアACWAとスペインTSKのコンソーシアムを選んだと発表した。決め手はコスト。発電所の生涯を通じた発電コスト(LCOE)は、5.85米セント/kWhという世界最小水準だ。

» 2015年01月21日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 アラブ首長国連邦とドバイの位置

 世界のほとんどの国において、火力発電が発電の主軸となっている。全発電量に占める太陽光発電の割合を高めるには、発電コストをなるべく下げる必要がある。

 世界で最も発電コストが低いと主張する太陽光発電所がアラブ首長国連邦のドバイに立ち上がる(図1)。ドバイ電力水道公社(DEWA)が発注したムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム太陽光発電所だ(図2)。規模は200MW(4.5km2)。

 設計・調達・建設(EPC)先として2015年1月に受注したのは、サウジアラビアACWAとスペインTSKのコンソーシアムだ。DEWAによれば入札には10のコンソーシアムが参加*1)。ACWAとTSKが選ばれたのは、均等化発電原価(LCOE:Levelized Cost Of Electricity)の値が、5.84869米セント/kWh(120円換算で7円/kWh)と、最も低かったからだという(関連記事)。

 LCOEとは発電所の設計、建設から運営、廃止までの全コストを、生涯発電量で割った値*2)。今回の数値は米国が2020年までに達成しようとしているLCOEの値(6米セント/kWh)をも下回っている。

*1) 第1期のEPCは米First Solar。
*2) LCOEは発電所の建設コストや年間の発電コストよりも広い概念。実質ドルで示した数値であり、送配電コストは含まない。

図2 ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム太陽光発電所(第1期)の外観 出典:DEWA

なぜ世界最高水準なのか

 今回の発電所がLCOEにおいて世界最高水準にある理由は、日射量で一部説明できる。LCOEの分母は生涯発電量であり、生涯発電量は日射量×変換効率×発電所の寿命とほぼ等しいからだ。ドバイの日射量は1m2当たり、年間2000kWhを超えている。これは日本国内の値より、50%も多い。

 ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム太陽光発電所のLCOEが世界的に見てどの程度の水準にあるのかは、ドイツの研究から判断できる。フラウンホーファー研究所の太陽光関連の部署Fraunhofer-Institut für Solare Energiesysteme (Fraunhofer ISE)が2013年11月に発表したレポート「Levelized cost of electricity renewable energy technologies」では、さまざまな条件における各種再生可能エネルギーのLCOEを予測している。

 図3に示したのは日射量の大きな地域におけるLCOEだ。太陽光発電(黄色)の他、集光型太陽熱発電(CSP、赤枠)と集光型太陽光発電(CPV、オレンジ枠)について、上限と下限を算出している。

 図3の単位はユーロ。1ユーロ=1.3米ドル(2013年時点の為替レート)で換算すると、今回の5.85米セント/kWhという値は、2030年時点の値である0.045ユーロに相当する。従って、日照量に頼り切っているのではなく、建設コストや、機材においても優れた発電所だということが分かる。

図3 日照量の大きな地域におけるLCOEの予測 出典:ドイツFraunhofer ISE
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