42MWの地熱発電所が4月に建設開始、国が210億円の債務保証で後押し自然エネルギー

秋田県の湯沢市で大規模な地熱発電所の建設が決まった。4月に工事を開始して、2019年に運転を開始する予定だ。発電能力は42MWで、年間の発電量は7万世帯分に及ぶ。事業費のうち国が210億円の債務を保証する形で銀行5行が協調融資を実施することになった。

» 2015年02月03日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 地熱発電所の建設予定地は、山形・宮城の両県に隣接する秋田県湯沢市の森林地帯にある(図1)。近くには東北電力の「上の岱(うえのたい)地熱発電所」が1994年から稼働していて、数多くの温泉が湧き出る地熱資源の豊富な地域だ。

図1 「山葵沢地熱発電所」の建設予定地。出典:湯沢地熱

 新たに建設が決まった「山葵沢(わさびさわ)地熱発電所」は発電能力が42MW(メガワット)に達する。大規模な地熱発電所は開発に着手してから運転を開始するまでに10年以上の長期間を必要とすることから、発電事業者にとっては資金調達が大きな課題になっている。

 山葵沢地熱発電所を建設する湯沢地熱は銀行5行から262億5900万円にのぼる協調融資を受けることが決まった。国が融資額の80%にあたる210億円の債務を保証するスキームで、2013年度からJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて実施している地熱資源開発支援プログラムの一環である(図2)。

図2 国による債務保証のスキーム。出典:資源エネルギー庁

 湯沢地熱開発は資金調達が確定したことから、当初の計画通り2015年4月に建設を開始する。運転開始は4年後の2019年5月になる予定だ(図3)。地熱発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は70%が標準で、この比率を適用すると年間の発電量は約2億6000万kWhにのぼる。一般家庭で7万世帯に相当する電力量になり、湯沢市の総世帯数(約1万8000世帯)の4倍近い規模になる。

図3 地熱発電所の完成イメージ。出典:湯沢地熱

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する見込みだ。発電能力が15MW以上の地熱発電の買取価格は1kWhあたり26円(税抜き)に設定されていることから、設備利用率が70%であれば年間の売電収入は約67億円になる。

 発電設備には「ダブルフラッシュ方式」を採用する(図4)。通常の地熱発電の設備では、地中から湧き出る蒸気を利用してタービンを回転させる「シングルフラッシュ方式」が一般的だ。これに対してダブルフラッシュ方式は蒸気と一緒に噴出する熱水から二次蒸気を発生させてタービンの回転数を増やす。シングルフラッシュ方式に比べて出力が15〜20%大きくなる利点がある。

図4 「ダブルフラッシュ方式」による地熱発電設備。出典:湯沢地熱

 事業者の湯沢地熱はJ-POWER(電源開発)が2010年に三菱マテリアルと三菱ガス化学を加えて3社共同で設立した。建設に向けて環境影響評価の手続きを2011年11月に開始して、2014年10月に完了している。計画に着手してから約3年半で地熱発電所の建設工事にこぎつける。

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