東北最大級のバイオマス発電が2016年7月に開始、3万8000世帯に電力供給自然エネルギー

秋田県秋田市の向浜で、東北地方最大級となるバイオマス発電計画が進められている。最大出力は20MWで、年間の発電量は約3万8000世帯分を見込んでいる。秋田県の豊富な森林資源や未利用材を活用し、地域雇用の創出にも貢献する。

» 2015年04月07日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 投資会社のくにうみアセットマネジメント(東京都千代田区)はユナイテッド計画(秋田県潟上市)が計画する木質バイオマス発電事業に4億円を出資する。同事業は秋田県秋田市向浜で計画される最大出力約20MW(メガワット)の発電事業で、年間の発電量は約3万8000世帯分を見込んでいるという。木質専焼のバイオマス発電所としては東北地方最大級のものとなる。総事業費は約125億円。2016年7月の運転開始を予定している。

 木質バイオマス発電事業は、バイオマス燃料の調達量を安定的に確保することがポイントとなる。今回のプロジェクトでは、地元林業者らと連携することで地域の間伐材を長期に安定して調達できる体制を構築した。

 秋田県はスギ人工林の保有資源量が全国一位であり、豊富な森林資源を有している。また県南部では、積雪の影響を受けた曲がり材などが多く、間伐などによる林地残材も未利用のままのものが大量にある。これらの地元の未利用材をバイオマス発電事業に活用することで、適正な森林管理にもつながる。さらに発電所で25人の新規雇用があるだけでなく、関連するチップ工場での新規雇用など、幅広い範囲で地域経済の活性化効果も見込まれている。

 今回のバイオマス発電事業への出資は、事業を主体に進めるユナイテッドリニューアブルエナジー(SPC)に対して、ユナイテッド計画が5億円、くにうみアセットマネジメントが4億円、レノバ(東京都千代田区)が4億円を出資する。さらに環境省管轄であり「地域低炭素化出資事業」の基金法人であるグリーンファイナンス推進機構(東京都港区)が7億円を出資する(優先株)。融資に関しては、地元金融機関を中心に複数の金融機関から約74億円、秋田県のふるさと融資から31億円を受ける予定だ(図1)。

図1 秋田県秋田市向浜で計画されているバイオマス発電計画の事業スキーム 出典:くにうみアセットマネジメント

 発電所には住友重機械工業のボイラーが使用される。稼働後はSPCが中心となって発電設備の運転・維持管理・保守を行う予定だ。発電した電力は特定規模電気事業者(PPS)や東北電力へ売電される。なお、この事業によるCO2削減効果は年間7万7088トンが想定されている。

 くにうみアセットマネジメントの木質バイオマス発電事業への出資は、2015年4月1日から売電を始めた宮崎森林発電所(宮崎県川南町)に次ぐ2件目となる。農林水産省が同年1月に作成した報告書「小規模な木質バイオマス発電の推進について」によると、木質バイオマス発電は、再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)により、従来未利用だった林地残材の新たな需要を創出している。さらに資源の有効利用を通じて地域で雇用が増大するなど、林業政策と相まって地域活性化に大きく寄与すると評価されている。

*電子ブックレット「全国に広がる木質バイオマス発電 最新動向」をダウンロード

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