羽根のない風力発電機が2016年に市場へ、細長い円筒が揺れて電力を起こす蓄電・発電機器

ユニークな風力発電機の開発がスペインの会社で進んでいる。野球のバットのような形で、風車は使わない。地上に立てると、風が巻き起こす渦に共鳴して揺れ続け、その動きを電力に変える。騒音がなく、鳥の衝突も防げる。最初の製品は高さが12メートル、発電能力は4kWを予定している。

» 2015年05月22日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 スペインのベンチャー企業「Vortex Bladeless(ヴォーテックス・ブレードレス)」が開発中の風力発電機が注目を集めている。羽根(ブレード)のない風力発電機で、見た目は野球のバットに似ている(図1)。外側の素材はカーボンファイバーとグラスファイバーを合成したものだ。

図1 「羽根のない風力発電機」の設置イメージ。出典:Vortex Bladeless

 この「羽根のない風力発電機」に風が当たると、空気の流れによる渦(ヴォーテックス)の力で上のほうが大きく揺れる。内部の下のほうには反発する2枚の磁石が組み込まれていて、揺れによって生じる上下の動きで電力を発生させる。通常の発電機と同様に、電磁誘導の作用で機械エネルギーを電気エネルギーへ変換する仕組みだ。

 現在は高さが6メートルのプロトタイプをフィールドテスト中で、2016年に発売予定の最初の製品は2倍の12メートルになる。発電能力は4kW(キロワット)と小さく、家庭や小規模の会社で利用することを想定している。さらに発電事業用の1MW(メガワット=1000キロワット)クラスの製品を2018年に投入する計画だ。高さは100メートルを超える見込みである。

 Vortex社の試算では、従来の風力発電機と比べて電力1kWh(キロワット時)あたりの発電コストが40%も低くなる。機械的な部品を使わないため、メンテナンスのコストも小さい。風車の回転による騒音の発生や鳥の衝突も生じない。細長い円筒形の構造物を立てるだけで済み、狭い場所に設置することも可能になる。いろいろと良いことずくめだが、現段階では実現性を疑問視する声もある。

 Vortex社は製品化に先がけて6月1日から、インターネットを使って多数の出資者を募るクラウドファンディングを開始する。これまでに投資家から100万ドル(1億2000万円)を超える資金を集めたが、クラウドファンディングを実施して米国を中心に市場の期待感を高める狙いがある。早く製品化して有効性を実証したいところだ。

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