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» 2015年06月26日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:住民26人が立ち上げた地熱発電所、熊本の温泉郷で商用運転を開始

地熱資源が豊富な熊本県の「わいた温泉郷」に、高温の蒸気を利用した本格的な地熱発電所が運転を開始した。発電能力は2MWで、年間に3400世帯分の電力を供給できる見込みだ。地元の住民26人が地域の活性化を目指して取り組む。国の補助金を受けて、周辺地域に熱も供給する。

[石田雅也,スマートジャパン]
waita2_sj.jpg 図1 「わいた温泉郷」の位置。出典:中央電力ふるさと熱電

 阿蘇山から北へ30キロメートルほどの場所に、湯量が豊富なことで知られる「わいた温泉郷」がある(図1)。山に囲まれた集落のあちこちに湯煙が上がる地熱資源に恵まれた地域だ。

 この温泉郷の一角に、地下からくみ上げた高温の蒸気で発電する「フラッシュ発電方式」の地熱発電所が誕生した。地元の住民26人が2011年に設立した合同会社「わいた会」が所有する「わいた地熱発電所」である。2014年12月に試運転を開始した後に、約半年間かけて確認作業を実施してから6月16日に商用運転に入った(図2)。

waita1_sj.jpg 図2 「わいた地熱発電所」の全景。出典:わいた会、中央電力ふるさと熱電

 一般に温泉地で建設する地熱発電所は100度以下の熱水を利用する「バイナリー発電方式」が多い。わいた地熱発電所が採用したフラッシュ発電は大規模な地熱発電所で使われている方式で、高温の蒸気でタービンを回転させて発電する。大量の蒸気を得られる場合には、発電能力を大きくできるメリットがある。

 わいた地熱発電所では130度の蒸気を1時間に約20トン使うことができる。発電能力は2MW(メガワット)に達する。国内でメガワット級の地熱発電所が運転を開始したのは、東京電力の「八丈島地熱発電所」(3.3MW)が1999年に稼働して以来16年ぶりのことである。

 地熱発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は70%以上と高い。かりに70%として年間の発電量を計算すると1200万kWh(キロワット時)になる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して3400世帯分に相当する規模で、わいた温泉郷がある小国町(おぐにまち)の総世帯数(3100世帯)を上回る。

 発電した電力は固定価格買取制度で売電する。発電能力が15MW未満の買取価格(1kWhあたり40円、税抜き)を適用すると年間の売電収入は約5億円になる見込みだ。わいた会みずからが電力会社に売電する一方で、発電所の建設や運営管理は「中央電力ふるさと熱電」に委託する方式をとった(図3)。

waita5_sj.jpg 図3 地熱発電事業のスキーム。出典:わいた会、中央電力ふるさと熱電

 わいた会は地熱発電所の開発にあたって、国から「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」の交付を受けた。地熱を利用して地域の振興に役立てることを目的にした補助金である。わいた会では補助金を使って周辺地域に配管を敷設して、発電所で利用しない熱水を供給する計画だ。地域の貴重な資源である地熱を再生可能エネルギーとして最大限に活用する(図4)。

waita3_sj.jpg 図4 地熱発電所の周辺地域。出典:中央電力ふるさと熱電

 地元の小国町は2013年度に国から「環境モデル都市」に選ばれて、2030年までにCO2排出量を1990年比で25%削減する目標を掲げている。この目標を達成するために「地熱とバイオマスを活かした農林業タウン構想」を2014年度から開始した。地域の地熱資源と森林資源を農業や林業の活性化に生かしながら、再生可能エネルギーによるCO2排出量の削減に取り組んでいく(図5)。

waita4_sj.jpg 図5 「地熱とバイオマスを活かした農林業タウン構想」の全体像(画像をクリックすると拡大して表示)。出典:小国町役場

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