地熱発電が途上国に広がる、日本はケニアに抜かれて世界で9位再生可能エネルギーのグローバルトレンド(5)

古くて新しい再生可能エネルギーと言えるのが地熱だ。火山地帯で大量に噴出する蒸気を使って発電することができる。最近はケニアを筆頭にアフリカやアジアの途上国で開発が進んでいる。発電規模では地熱の資源量が最大の米国がトップ。日本は資源を十分に生かせず第9位に甘んじている。

» 2015年06月26日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

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 再生可能エネルギーの中で自然の蒸気をそのまま利用して発電できるのは地熱だけである。世界の中で活火山が多い地域に地熱は偏在している。推定の資源量は米国、インドネシア、日本の3カ国が圧倒的に大きい。そのほかではフィリピン、メキシコ、アイスランド、ニュージーランド、イタリアなどにも多く存在する。

 こうした世界各国にある火山地帯で地熱発電設備の大半が稼働している。2014年末の時点で総容量が最も大きいのは米国で、2位のフィリピンの約2倍もある(図1)。それでも米国の再生可能エネルギー全体の2%程度にとどまり、電力源としての重要性はさほど大きくない。

図1 上位10カ国の地熱発電設備の総容量。棒グラフの上の部分は2014年の新設分、下は2013年末の合計。単位:メガワット(=1000キロワット)。出典:REN21

 むしろ最近では途上国で地熱発電の役割が高まってきた。2014年に運転を開始した地熱発電設備の割合を国別にみると、半分以上をケニアが占めている(図2)。ケニアで新たに導入した地熱発電設備の容量は358MW(メガワット)にのぼり、累計の容量でも日本を一気に抜き去った。

図2 2014年に運転を開始した地熱発電設備の容量シェア。出典:REN21

 ケニアにはアフリカを縦断する火山地帯が広がっていて、その中の「オルカリア地熱地帯」で大規模な地熱発電所の開発プロジェクトが進んでいる(図3)。日本企業も参画して合計5カ所に発電所を展開中で、2014年には280MWが運転を開始した。さらに140MWの開発計画もあり、2015年以降も拡大は続いていく。

図3 ケニアの「オルカリア地熱地帯」の位置。出典:国際協力機構

 このほかではトルコ、インドネシア、フィリピン、イタリアの順に地熱発電の容量が増えている。日本は小規模なバイナリー方式の地熱発電設備が運転を開始して、2014年に3.5MWが加わった。米国も同様に3.5MWの増加で、地熱発電はアフリカとアジアの途上国にシフトしている。アフリカでは東側に地熱資源が多く存在して、ケニアの北に隣接するエチオピアでも大規模な開発計画が始まっている。

 地熱は発電のほかに熱をそのまま利用するケースも多い(図4)。2014年に全世界で消費した地熱のエネルギーを発電と熱利用に分けると、発電が740億kWh(キロワット時)、熱利用も730億kWhにのぼり、ほぼ同じ規模がある。

図4 全世界のエネルギー消費量の比率(2013年)。左上から右下へ順に、化石燃料(Fossil fuels)、原子力発電(Nuclear Power)、すべての再生可能エネルギー(All renewables)、現代の再生可能エネルギー(Modern renewables)、伝統的なバイオマス(Traditional biomass)、バイオマス/地熱/太陽熱利用(Biomass/geothermal/solar heat)、水力発電(Hydropower)、風力/太陽光/バイオマス/地熱発電(Wind/solar/biomass/geothermal power)、バイオ燃料(Biofuels)。出典:REN21

 国別では中国の地熱利用量が最も多くて206億kWh、次いでトルコ、アイスランド、日本の順になる。日本でも電力量に換算して71億kWh分の地熱エネルギーが発電以外の方法で使われている。

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