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» 2015年07月02日 11時00分 UPDATE

電力供給サービス:洋上から陸上まで直流で送電するシステム、日本の近海に風力発電を広げる

2020年代には日本の近海で数多くの洋上風力発電所が稼働する見込みだが、大きな課題の1つが陸上までの送電方法だ。東京電力を中心に洋上風力を対象にした次世代の送電システムの開発プロジェクトが始まった。2020年までに洋上から陸上の変電所まで直流による長距離の送電を可能にする。

[石田雅也,スマートジャパン]

 電力分野の技術開発で先端を走る企業や大学など10社・法人が共同で新しいシステムの開発に乗り出す。国が2015年度に10億円の予算で実施する「次世代洋上直流送電システム開発事業」によるプロジェクトで、2019年度までの5年間をかけて基盤技術を確立する計画だ。

 開発対象の直流送電システムは洋上にある複数の風力発電所をつないだ大規模なものを想定している。通常は発電所で作った電力を変圧しやすい交流で送電するが、交流で長距離を送電すると電力の損失が大きくなってしまう。この問題を解消するために洋上に変電所を建設して、直流に変換してから陸上の変電所まで電力を送る仕組みにする(図1)。

yojo_soden2_sj.jpg 図1 複数の洋上風力発電所をつなぐ直流送電システムの展開イメージ。出典:NEDO

 しかも洋上にある複数の発電所と変電所を組み合わせた高度な送電システムを開発することがプロジェクトの目標だ。目指すのは「多端子自励式直流送電システム」の実用化である。洋上と陸上の変電所に自励式の電力変換設備を導入して、複数の変電所のあいだを直流で安全に送電できるようにする(図2)。

yojo_soden1_sj.jpg 図2 「多端子自励式直流送電システム」の構成イメージ。出典:東京電力

 自励式は半導体の特性を利用して電力を交流から直流へ変換する方式で、設備をコンパクトにできるうえに変換のミスがないなどの利点がある。コストが低くて信頼性の高い直流送電システムを構築することが可能になることから、洋上に展開するのに適している。

 5年間のプロジェクトの中で送電システムの設計と事業性の評価を実施しながら、直流送電に必要な要素技術の開発を進めていく。送電システムの一部に事故が発生した場合に事故区間を切り離すための直流遮断器や、海底に敷設する直流送電ケーブルも開発の対象に含まれる。

 このプロジェクトは東京電力を幹事会社にして、民間からは東芝・日立製作所・住友電気工業・古河電気工業・大林組の合計6社が共同開発にあたる。さらに大学・研究機関から東京大学・大阪工業大学・東京電機大学・電力中央研究所が加わる。

 参加メンバーのうち東京電力・日立製作所・古河電気工業・東京大学の4者は、福島沖で実証中の浮体式による洋上風力発電の実証プロジェクトにも参画している。福島沖では洋上にある変電所が発電所から送られてくる交流の電力を変圧して、20キロメートル先の陸上まで交流で送電する方法だ(図3)。この実証を通じて洋上から交流で送電する場合の効率や信頼性などを検証することができる。

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yojo_soden4_sj.jpg 図3 福島沖で運転中の洋上変電所「ふくしま絆」(上)、送電システムの構成(下)。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 福島沖で実際の設備を使って発電・変電・送電を続けながら、一方で次世代の直流送電システムの開発を進めていく。両方の成果を組み合わせれば、2020年代には日本の近海に数多くの洋上風力発電所を展開して、大量に発電した電力を陸上まで効率よく送電することが現実になる。

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