太陽光と風力の発電量、送配電事業者が地域ごとに予測へ動き出す電力システム改革(39)(1/2 ページ)

小売全面自由化で再生可能エネルギーの電力の取り扱いも変わる。地域の需給状況に合わせて発電設備の出力制御が必要になった場合には、送配電事業者が太陽光と風力の発電量を予測して小売電気事業者に配分する方法だ。出力制御に従って発電した電力は小売電気事業者が全量を買い取る。

» 2015年07月15日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第38回:「再生可能エネルギーの買取義務を変更、小売電気事業者に上限を設定」

 2016年4月から発電・送配電・小売の3区分に事業者を再編して、電力の流れに沿ったわかりやすい構造になる(図1)。発電事業者の電力が送配電事業者によって需要家まで届けられて、小売電気事業者が販売する体制だ。物理的な仕組みは現在と変わらないが、事業者の役割は変わる。特に再生可能エネルギーの固定価格買取制度に関連する変更点には注意が必要だ。

図1 小売全面自由化に伴う事業者の区分変更(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 送配電事業者(電力会社の送配電部門)は地域ごとに発電量と需要を予測しながら、必要に応じて発電設備の出力制御を要請することができる。その出力制御のルールが小売全面自由化と同時に変わる。これが1つ目の重要な変更点だ。

 現在は電力会社(一般電気事業者)が所有・調達する発電設備から出力を制御する順番になっている。小売全面自由化後は新電力(特定規模電気事業者)を同じ位置づけに変える必要があるため、新電力が所有・調達する火力発電設備も出力制御の最初の対象に加わる(図2)。

図2 現在の出力制御ルール(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 もう1つの変更点は「計画値同時同量制度」の導入である。電力は常に発電量と需要を一致させる「実同時同量」が原則だ。従来は電力会社が実同時同量を維持してきたが、小売全面自由化後は送配電事業者の役割になる。これに合わせて発電事業者と小売電気事業者は30分単位の発電量と需要の計画値を策定して、必ず1時間前までに送配電事業者に報告する義務がある(図3)。

図3 計画値同時同量制度の実施手順(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ここで問題になるのが、天候によって発電量が変動する太陽光や風力の計画値を想定する方法だ。個々の事業者が一般家庭の太陽光まで含めて発電量を見極めることは難しい。小売全面自由化後は送配電事業者が天気予報や日射量の予測データをもとに、地域全体の発電量を想定する方法をとる(図4)。地域の単位は都道府県別になる可能性が大きい。

図4 太陽光発電の計画発電量の想定イメージ。出典:資源エネルギー庁
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