バイオマスで「創造的復興」を果たす、生ごみから電力・温水・肥料を作る自然エネルギー(1/2 ページ)

宮城県の南三陸町が「バイオマス産業都市」に生まれ変わろうとしている。地域の資源を生かしたバイオガス事業と木質ペレット事業を中核に、新たな産業で雇用を創出する「創造的復興」を推進していく。町内で発生する生ごみを利用したバイオガス発電が第1弾として2015年内に始まる。

» 2015年08月28日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 南三陸町の位置。出典:南三陸町環境対策課

 南三陸町は宮城県の太平洋沿岸部にある人口1万4000人の町で、海と山の資源に恵まれている(図1)。東日本大震災で甚大な被害を受けたが、2011年に震災復興計画、2013年にバイオマス産業都市構想を策定して「創造的復興」へ動き出した。

 創造的復興は震災前の状態に回復させるだけではなくて、地域のバイオマス資源を有効に活用して新たな産業の創出を目指す。その中核の事業にバイオガスと木質ペレットの2つを位置づけた。

 街と海から排出する生ごみなどの廃棄物を利用してバイオガスによる発電事業を推進する一方、森で発生する大量の残材から木質ペレットを製造して地域のエネルギー源に利用する計画だ(図2)。

図2 「南三陸町バイオマス産業都市構想」の全体イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:南三陸町環境対策課

 2つの事業のうちバイオガスの取り組みが先行して進んでいる。南三陸町の公募で選ばれた環境サービス企業のアミタが事業主体になって、2015年3月にバイオガス施設の建設工事に着手した。建設用地は震災前に町の下水処理施設があった場所だ。新設するバイオガス施設に町内で発生する生ごみや排せつ物を集めて、発酵処理を経てバイオガスを作る(図3)。

図3 バイオガス事業の全体像。出典:南三陸町環境対策課

 1日に約10トンの廃棄物から作ったバイオガスを利用して、年間に22万kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して60世帯分に相当する。発電した電力はバイオガス施設で消費したうえで、余剰分を売電する方針だ。緊急時には施設を避難所にして災害対策にも生かす。

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