80年前に稼働した水力発電所を再生、湖からの水流で1万1600世帯分の電力自然エネルギー

1800年代から電線の製造を続ける古河電気工業が栃木県の日光市で運営する水力発電所を使って売電事業に乗り出す。80年前に稼働した水力発電所の設備を更新して11月1日に売電を開始する予定だ。同じ市内で稼働する合計4カ所の水力発電所を増強しながら売電量を拡大していく。

» 2015年10月16日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 電線大手3社の一角を占める古河電気工業の始まりは、1877年に栃木県で足尾銅山の開発に着手したことにある。電線の素材になる銅の精錬に大量の電力が必要になるため、精銅所のある日光市内に最初の水力発電所を1906年に建設した。水源になる中禅寺湖から急峻な地形を下る水流を取り込んで、これまでに4カ所の水力発電所を稼働させてきた(図1)。

図1 古河電工グループの水力発電所。出典:古河電気工業

 4カ所の中で最も下流に位置する「上の代(うわのしろ)発電所」は1935年に運転を開始した。稼働から80年近くが経過して老朽化したために、発電機を含む主要な設備を更新して出力を引き上げる(図2)。従来は最大5800kW(キロワット)だった発電能力を5920kWに高めて、11月1日に運転を開始する予定だ。

図2 「上の代発電所」の建屋と水路。出典:古河電気工業

 年間の発電量は4200万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して1万1600世帯分に相当する。日光市の総世帯数(3万3600世帯)の3分の1をカバーする電力になる。設備投資額は約12億円である。

 設備を更新する以前には、発電した電力を古河電工グループ専用の送電系統を使って近隣の工場や事業所で消費してきた。新たに東京電力の送電系統にも接続して、固定価格買取制度による売電事業を開始する。発電能力が1000kW以上で、既設の導水路を利用した場合の買取価格は1kWhあたり14円(税抜き)になる。

 続いて同じ日光市内で1953年から稼働してきた「背戸山(せとやま)発電所」の設備も更新する(図3)。設備更新後の運転開始は2017年1月を予定している。発電した電力は同様に固定価格買取制度を適用して売電する方針だ。

図3 最大出力1万5700kWの「細尾発電所」(左)、設備を更新する「背戸山発電所」(右)。出典:古河日光発電

 発電能力は従来と変わらず最大790kWで、年間の発電量は400万kWhを想定している。発電能力が1000kW未満の場合には、既設の導水路を活用しても買取価格は21円(税抜き)に上がる。背戸山発電所の設備投資額は約6億円を見込んでいる。

 新旧合わせて4カ所の水力発電所は古河電工グループの古河日光発電が運営している。4カ所を合計した発電能力は最大で3万110kWに達する。いずれの発電所も中禅寺湖を水源にして、河川を流れる水をそのまま取り込む「流れ込み式」を採用している。水の流量によって出力が変動するが、水力発電の中でも環境負荷の低い発電方法である。

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