再生可能エネルギーの電力買取、固定価格から変動方式へ法制度・規制(1/2 ページ)

2030年に向けて再生可能エネルギーの拡大と買取費用の低減を両立させるために、政府は現行の固定価格買取制度の価格決定方法を見直す。年度別に固定の価格を設定する方式から、長期に価格が低減していく方式や市場価格に連動する方式を検討中だ。早ければ2016年度から導入する。

» 2015年10月21日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 「固定価格買取制度(FIT:Feed-In-Tariff)」の名称が変わるかもしれない。2012年7月に始まった再生可能エネルギーの電力を買い取る制度は国内の太陽光発電を一気に拡大する効果を発揮したものの、さまざまな課題を抱えて見直しを迫られている。太陽光以外の再生可能エネルギーが伸び悩む一方で、20年間にわたって保証する高い買取価格が国民の負担を毎年増やしてしまうためだ。

 政府は制度改革に向けた委員会を9月に発足して、買取制度の抜本的な見直しを進めている。中心のテーマは買取価格の決定方法だ。これまでは5種類の再生可能エネルギーの買取価格を年度ごとに決めてきた。しかし運転開始までの期間が長い風力や地熱では、将来の買取価格が事業者にとって重要な判断材料になる(図1)。

図1 固定価格買取制度の認定・運転開始までに要する期間。出典:資源エネルギー庁

 風力を例にとると、発電能力が1万kW(キロワット)以上の大規模な設備を建設する場合には、事前に環境影響評価(アセスメント)の手続きが義務づけられている。このため事業化を判断してから買取制度の認定を受けるまでに3〜4年もかかる(図2)。ようやく認定の時点で買取価格が決まり、さらに発電設備の規模によって1〜3年後に運転を開始して買取がスタートする。

図2 風力発電の開発にかかる期間と費用。出典:資源エネルギー庁

 事業化を判断する時には3〜4年後に決まる買取価格を想定しなくてはならないが、現行の制度では正確な予測は不可能だ。地熱や中小水力でも同様の問題があり、事業者にとっては多額の投資を伴う建設プロジェクトを推進しにくい状況になっている。

 そこで政府の委員会では見直し案の1つとして、数年先に認定を受ける発電設備の電力買取価格をあらかじめ決定する方式を検討中だ。再生可能エネルギーの種類別に2〜5年先まで買取価格を決めておく案が有力で、太陽光も含める可能性が大きい。

 しかも買取価格は長期にわたって固定しないで変動させる方式を採用する。いち早く2000年に再生可能エネルギーの買取制度を開始したドイツでは、発電設備の拡大に伴って買取価格を変動方式へ移行してきた。そうしたヨーロッパの先進事例を参考にしながら、日本の状況に適した価格決定方式を選択することになる。

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