電力の大市場を抱える東京湾岸の工業地帯に、発電能力49MWの木質バイオマス発電所が営業運転を開始した。昭和シェル石油グループが製油所の跡地に建設した発電所で、電力事業を拡大する戦略の一環だ。燃料は海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ殻を利用する。
昭和シェル石油グループが「京浜バイオマス発電所」の営業運転を11月2日に開始した(図1)。発電能力は49MW(メガワット)に達して、国内で稼働中の木質バイオマス発電所では最大級だ。年間の発電量は3億kWh(キロワット時)を予定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると8万3000世帯分に相当する。
発電所が立地する神奈川県の川崎市は政令指定都市で、大きな電力需要を抱えている。人口は146万人、総世帯数は70万世帯にのぼる。その1割以上の家庭の電力需要をカバーできる発電量になる。発電した電力は再生可能エネルギーの固定価格買取制度を通じて売電する計画だ。
燃料には海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ殻(PKS)を利用する(図2)。固定価格買取制度の買取価格は1kWhあたり24円(税抜き)になり、年間の売電収入は72億円を見込める。昭和シェル石油が100%出資する「京浜バイオマスパワー」が発電事業を担当する。売電先は新電力でもある昭和シェル石油になるとみられる。
バイオマス発電の中核設備になるボイラーには、JFEエンジニアリングの「循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)」方式を採用した。バイオマス発電用のボイラーは燃料の種類と発電能力の大きさによって3種類の方式がある(図3)。このうちCFB方式のボイラーは木質ペレットやPKSを燃料に使うことができて、しかも10MW以上の発電能力に対応できる高い発熱量を得られる点が特徴だ。
CFB方式は砂状の流動媒体をボイラー内で循環させながら、他の方式よりも少ない空気を使って高効率で熱を発生させることができる(図4)。木質バイオマス発電所で10MW以上の場合にはCFB方式が標準的に使われている。
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