高架を走るモノレール、蓄電池で弱点カバー蓄電・発電機器(1/2 ページ)

大電力を利用する鉄道では、さまざまな省エネルギー技術を導入する余地がある。多摩都市モノレール(東京都)は、モノレール特有の弱点を解消するために蓄電池技術を採用する。省エネルギーにも役立つ技術だ。

» 2015年12月03日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 東京都西部を拠点とする多摩都市モノレールは、2015年11月19日、「電力貯蔵装置」を新規導入すると発表した。2015年12月に着工し、2016年6月をめどに完成、実運用を開始する。

 導入目的は2つある。1つは、自然災害などによる停電に備えること。停電時に車両へ電力を供給し、最寄り駅まで走行できるようにする(図1)。これまでは駅間で車両が停止した場合、高所作業車などを使って乗客を救出する対策を立てていた。今後は、救出を待たずに車両が自力で駅まで到達できる。高架上を走る乗り物では、このような対応はありがたい。

図1 停電時には蓄電池が放電して電力を供給する 出典:多摩都市モノレール

 もう1つはモノレールが減速する際のエネルギーをいったん電力として蓄え、加速する際に放出すること。省エネを目的とする回生電力の利用だ(図2)。電力を回生しないと、ブレーキから熱として失われてしまう。

図2 平常時には蓄電池が回生電力を貯蔵し必要に応じて供給する 出典:多摩都市モノレール

異なる要求を同時にかなえる

 多摩都市モノレール線は、多摩地区内で5つの市を南北に接続する。営業キロ数16.0キロメートルに19の駅が並ぶ。装置を導入するのは、日野市内の2駅(甲州街道駅と万願寺駅)に挟まれた日野変電所だ(図3)。

 多摩都市モノレール線は直流1500ボルトを利用している*1)。電圧降下が生じるため、同程度の容量を備えた3カ所の変電所を運用している。北から立川変電所、日野変電所、東中野変電所だ。「日野変電所を選んだのは(営業キロ数でいう)ほぼ中間に位置するためだ。停電時はこの1カ所からだけ電力を供給するため、車両の走行速度を時速15キロメートルに落とす。このとき回生機能は働かない」(同社)。

 同社はこれまでも車両などにインバーターを設置しており、回生電力を駅の照明用電力などに生かしていた。「新装置の導入によって、これまでのインバーターよりも多くの電力を回生できる」(同社)。

*1) 各変電所は6万6000ボルトの交流を受けて、1500ボルトの直流を供給している。路線の北端から南端まで直列に接続された形だ。

図3 多摩地区5市を縦断する多摩都市モノレール線 日野変電所の位置を丸印で、各駅を黒点で示した。
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