連載
» 2016年01月19日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2015年版(39)高知:再生可能エネルギーの電力が10万世帯分、木質バイオマスが地域をめぐる (1/3)

森林率が全国1位の84%に達する高知県で木質バイオマス発電が活発に始まった。2015年に2つの発電所が相次いで運転を開始して、地域で発生する未利用の木材を燃料に電力と熱を供給する。太陽光発電では自治体と地元の民間企業が共同で出資する事業モデルが県内各地に広がってきた。

[石田雅也,スマートジャパン]

 森林に囲まれた内陸部の一角に、高知県が1997年に設立した高知工科大学のキャンパスがある。この大学で2011年に「グリーン・エネルギー・プロジェクト in 高知」が始まった。東日本大震災の影響の大きさを目の当たりにして、地域の資源を活用したエネルギー自給自足の重要性を認識したことが発端だ。

 プロジェクトの中核になるのは、県内で大量に発生する間伐材などを利用できる木質バイオマスエネルギープラントである(図1)。プラントで作り出した電力や熱は大学のキャンパスをはじめ周辺地域の農業用ハウスに供給する。エネルギーの自給自足を通じて、地域の農林業を「スマートな一次産業」へ進化させる狙いも込められている。

green_project2.jpg 図1 地域の木質バイオマスを活用した「グリーン・エネルギー・プロジェクト in 高知」の構想。出典:高知工科大学

 このプロジェクトをもとに大学発のベンチャー企業「グリーン・エネルギー研究所」が2012年に発足して、2014年1月から南西部の宿毛市(すくもし)で木質バイオマス発電所の建設に着手する。そして1年後の2015年2月に「宿毛バイオマス発電所」が運転を開始した(図2)。

sukumo_biomas.jpg 図2 「宿毛バイオマス発電所」の全景(上)、燃料に利用する未利用の木材(下)。出典:グリーン・エネルギー研究所

 発電能力は6.5MW(メガワット)あって、年間に4500万kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して1万2500世帯分に相当する。発電所が立地する宿毛市の総世帯数(1万世帯)を上回る規模の供給力がある。

 高知県では2011年度に「新エネルギービジョン」を策定して、再生可能エネルギーによる電力を2015年度までの5年間に3倍強へ増やす構想を推進中だ。太陽光・風力・小水力・木質バイオマスを合わせて年間に3億3400万kWhの電力を供給できるようにする。県内の電力需要の7%を再生可能エネルギーで自給自足することが目標である。

 その半分以上を木質バイオマス発電で供給する計画だが、宿毛バイオマス発電所が稼働した2014年度の時点で1年早く目標をクリアした。県内の再生可能エネルギーによる発電量は3億6500万kWhに達して、10万世帯分の電力を地産地消できるようになった。

 続いて2015年4月には、土佐グリーンパワーの「土佐発電所」が地域の未利用木材を燃料に使って運転を開始した(図3)。発電能力は6.25MWで、年間の発電量は4000万kWhを見込んでいる。この発電所だけで1万1000世帯分の電力を供給する能力がある。

tosa_greenpower1.jpg 図3 「土佐グリーンパワー土佐発電所」の全景。出典:土佐グリーンパワー

 発電所を運営する土佐グリーンパワーは、石油元売り大手の出光興産が地元の森林組合や鉄道会社と共同で設立した。発電所の構内には森林から集めた未利用の木材を破砕して乾燥・貯蔵する設備もある(図4)。木材の破砕から発電までの工程を一貫処理できる木質バイオマス発電所は日本で初めてだ。

tosa_greenpower2.jpg 図4 木質チップを貯蔵するサイロ(左)と原木置場(右)。出典:高知県林業振興・環境部
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.