従来の電力会社から別の事業者へ契約を変更する手続きはITを活用したシステムで処理する。国の広域機関が運用する「スイッチング支援システム」が3月1日に稼働するのと合わせて、電力会社10社でも対応するシステムの開発が進んでいる。すでにテストの大半を終えて3月末までに準備を完了する。
第54回:「家庭向けの電力小売自由化、4月1日スタートへ準備が進む」
4月1日から電力の小売を全面自由化するにあたって「スイッチング支援システム」が果たす役割は極めて大きい。小売電気事業者は電力の利用者から契約変更の要望を受けると、電力会社とのあいだで供給契約の切り替え手続きを進める必要がある(図1)。その一連の手続きをインターネットなどのIT(情報技術)を活用して短期間に完了できるようになる。
スイッチング支援システムを運用するのは、国全体の電力の需給計画を主導する「電力広域的運営推進機関」(広域機関)である。広域機関は全国10地域の一般送配電事業者(電力会社の送配電部門)と連携をとりながら、地域をまたいで適正な需給状態を維持しつつ小売自由化を推進する立場だ。
広域機関は自由化に先だって3月1日にスイッチング支援システムの運用を開始する。システムの主な役割は2つある。1つは小売電気事業者が利用者に契約プランを提案するうえで必要な電力使用量や電気設備の情報を提供する。もう1つは小売電気事業者が契約変更の申し込みを受けた後に、電力を利用者に届けるための「託送契約」の変更手続きを完了させることである(図2)。
いずれの手続きも一般送配電事業者の側で一連の作業が必要になる。電力会社はスイッチング支援と託送業務の2つに対応できるシステムを開発して迅速に処理することが求められている。各社が2月9日までに政府に報告した開発状況によると、10社すべて予定どおりに開発が進んでいる。
開発作業はシステムの設計・プログラミング・単体テストに続いて、システム全体の総合テストや外部テストを実施した後に、利用者のデータなどを新システムに移行して終了する。電力会社はスイッチング支援システムの整備を2月中に、託送業務システムの整備を3月中に完了する見通しだ(図3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.