低温の蒸気と熱水を使える地熱発電所、大分県の山中で建設開始自然エネルギー(1/2 ページ)

地熱発電所が数多く集まる大分県の九重町で新しい発電所の建設工事が始まった。従来の地熱発電所では利用できかった低温の蒸気と熱水を使えるバイナリー方式の設備を導入する。発電能力は5MWになり、国内の地熱バイナリー発電所では最大級だ。1年後の2017年3月に運転を開始する。

» 2016年03月03日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 九州電力が1996年に運転を開始した「滝上(たきがみ)発電所」に隣接する場所で、「滝上バイナリー発電所」の建設工事が3月1日から進んでいる(図1)。運転中の滝上発電所は発電能力が27.5MW(メガワット)に達する国内有数の地熱発電所で、5カ所の生産基地から高温の蒸気を供給して発電に利用している。

図1 「滝上バイナリー発電所」の位置。出典:出光興産

 蒸気を供給しているのは石油大手の出光興産グループの出光大分地熱である。出光大分地熱は5カ所のうちの「1号生産基地」の敷地内に、これまで利用していなかった地熱のエネルギーを使えるバイナリー発電所を建設中だ(図2)。2017年3月に運転開始を予定している。

図2 「滝上バイナリー発電所」の完成イメージ。出典:出光興産

 発電能力は5MWで、年間に3100万kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して8600世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は地熱発電で標準的な70%になる。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電して、年間に12億4000万円の収入を得られる見込みだ。

 新設するバイナリー発電所では、既設の滝上発電所で使っていない熱水を利用して発電する。地熱の生産基地では地下からくみ上げた蒸気と熱水を「気水分離器」にかけて、高温の蒸気だけを発電機に供給する仕組みになっている(図3)。分離した熱水はタンクに貯めてから、還元基地に送って地中に戻していた。

図3 「滝上発電所」の蒸気供給設備(画像をクリックすると拡大して発電設備も表示)。出典:九州電力
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