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» 2016年03月08日 13時00分 UPDATE

自然エネルギー:水素エネルギーの国家プロジェクト、2020年に低炭素な街づくりを実証 (1/3)

政府は東京オリンピック・パラリンピックで低炭素な水素社会を世界にアピールするために、各省庁が連携して技術開発を推進していく。中核を担う内閣府がCO2フリーの水素を輸送する「エネルギーキャリア」の構築を主導する一方、経済産業省や環境省などは水素の製造・利用面に注力する。

[石田雅也,スマートジャパン]

 安倍総理が3月5日に福島県を訪問して、「福島新エネ社会構想」をぶち上げた。福島県で再生可能エネルギーから燃料電池車1万台分に相当する水素を作って、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで活用するというものだ。官民一体の「構想実現会議」を3月中に設置して具体的な検討を開始する。

 福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の影響で、いまだに帰還困難区域が広い範囲に及んでいる。そうした状況の中で福島県を水素エネルギーの一大生産地に発展させて、国が目指す水素社会の先駆けの地として復興させる狙いだ。と同時に水素関連の先端技術を数多く開発して、新たな成長産業として世界市場に拡大させるもくろみもある。

 CO2(二酸化炭素)の排出量を抑えた低炭素な水素社会を実現するために、さまざまな分野で技術開発プロジェクトが始まっている。再生可能エネルギーの電力や熱を利用してCO2フリーの水素を製造する技術から、水素を大量に輸送する「エネルギーキャリア」、さらには燃料電池や水素タービンによる発電技術、燃料電池を搭載した自動車・バス・船の開発も進んできた(図1)。

enechain3_sj.jpg 図1 低炭素な水素社会を実現するための技術基盤(画像をクリックすると拡大)。出典:内閣府

 その中でも水素社会を実現するうえで最大の課題が「エネルギーキャリア」の構築だ。水素は化石燃料や再生可能エネルギーから大量に作ることができるが、常温・常圧では気体のため、大量に運搬・貯蔵することがむずかしい。解決策は超低温で液化したり、特殊な液体に溶け込ませたり、あるいはアンモニア(NH3)に変換して発電に利用したりする方法がある(図2)。

enechain1_sj.jpg 図2 「エネルギーキャリア」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:内閣府

 すでにアンモニアを利用した燃料電池や発電機の開発は進んでいる。水素を使った燃料電池と同等の性能を発揮する出力200W(ワット)のアンモニア燃料電池のほか、ガスタービン発電機を使って40kW(キロワット)級のアンモニア専焼発電にも成功している。

 エネルギーキャリアのプロジェクトを主導する内閣府は2016年度も引き続きアンモニア燃料電池とアンモニア専焼発電を中心に研究開発を推進するほか、太陽熱を利用した水素製造にも取り組む計画だ。CO2フリーの水素を安価に製造・利用できる技術と組み合わせて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで低炭素な街づくりのデモンストレーションを実施する(図3)。

enechain2_sj.jpg 図3 水素社会を実現するロードマップ。出典:内閣府
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