波力発電で24世帯分の電力を作る、三陸海岸の漁港で9月に実証開始へ自然エネルギー(1/2 ページ)

岩手県の漁港にある防波堤を利用して、波力発電の実証運転が9月に始まる予定だ。東京大学を中心とするプロジェクトチームが開発した発電装置を水深3メートルの場所に設置する。横幅4メートルの波受け板が振り子状に動いて、最大で43kWの電力を作ることができる。

» 2016年03月29日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 波力発電の実証実験は文部科学省が東北の復興に向けて2012〜2016年度の5年計画で推進するプロジェクトの一環で実施する。東京大学の生産技術研究所が岩手県の太平洋沿岸にある久慈市(くじし)で準備を進めている(図1)。

図1 三陸海岸で実施する海洋再生可能エネルギーの研究開発プロジェクト。出典:東京大学

 すでに発電装置の本体は完成した(図2)。4月に設置工事の入札を実施したうえで、8月中に工事を完了する見通しだ。その後に経済産業省の工事認可を受けて、順調に行けば9月から発電と送電を開始する。2017年3月まで実証運転を続けて発電量や安全性などを確認する予定になっている。

図2 波力発電装置の全景。出典:東京大学

 実証実験に使う発電装置は水中で波を受ける鋼製のジャケット構造物の上に、発電機を内蔵した建屋を搭載する(図3)。全体の大きさは横幅が7メートルで、奥行きと高さは12メートルある。重さは80トンあり、その重みで海底の岩盤に固定する重力式だ。海底を石組みで整地してから、発電装置全体をクレーンで吊るして設置する。

図3 波力発電装置の設置イメージ。黄色が波受け板、緑色が発電機。出典:東京大学

 水中では四角形の波受け板(ラダー)が振り子状に動いて、上部にある油圧シリンダーを動かす仕組みになっている(図4)。さらに油圧シリンダーの動きでオイルモーターを駆動して発電する。

図4 波力発電装置の内部構成。出典:東京大学
図5 波の方向から見た波力発電装置。出典:東京大学

 波受け板の大きさは幅4メートル、高さ2メートルで、海からの波を受けて動いた後に、防波堤からの反射波を受けて反対方向にも動く(図5)。このような振り子式で波力のエネルギーを効率的に発電に利用することができる。

 発電能力は最大で43kW(キロワット)である。波力は風力と同様に季節や天候によって変動するため、平均すると10kW程度の電力を供給できる見通しだ。年間の発電量は8万7600kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して24世帯分の電力になる。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は風力発電並みの23%を見込める。

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