2015年度の電力会社の決算は全社が営業利益を上げたものの、先行きは決して明るくない。10社のうち8社が売上高を減らし、4社が利益を減らした。各社とも利益の大半を燃料費の減少と燃料費調整額の差益に依存している。東京電力をはじめ第4四半期から業績が伸び悩む状況も見られる。
電力会社10社の2015年度の売上高は合わせて19兆4376億円で、前年から6.3%も減少した(図1)。その中でも東京電力は連結ベースで10%を超える減収になり、ひときわ不振が目立つ。特に第4四半期(2016年1-3月)は売上高が15.9%も縮小した。販売電力量が減少したことに加えて、電気料金に上乗せする燃料費調整額の低下分が大きかった。
他の電力会社も状況はさほど変わらない。売上高を増やした2社のうち、北海道電力は電気料金の再値上げを実施した効果で販売電力量の減少分をカバーした。ところが関西電力は再値上げを実施したにもかかわらず、東京電力と同様の理由で売上高が4.7%も減ってしまった。このほかに北陸電力が増収だが、子会社を連結対象に加えた効果によるもので、その分を除くと減収になる。
最大手の東京電力の決算の内容を見ると、現在の電力会社の収益構造がよくわかる。東京電力は収支の詳細を単独決算の数字で公表しているが、売上高の大半を占める電気料金の収入は前年度と比べて7707億円も減少した(図2)。販売電力量が年間で3.9%縮小したことによる減収が2110億円にのぼる。さらに燃料費調整額の減少が7450億円もある。
代わりに増えたのが燃料費調整額とともに電気料金に上乗せする再生可能エネルギーの賦課金で1670億円に拡大した。加えて発電事業者から再生可能エネルギーの電力を買い取った分の交付金が851億円ある。再生可能エネルギーの買取制度のおかげで売上高の減少を抑えることができたわけだ。
一方で支出面の変化は、もっと激しい。東京電力は燃料費だけで1兆355億円も減らした(図3)。そのうち火力発電の減少分が1700億円である。さらに化石燃料の輸入価格の変動による支出の減少が8660億円に達した。このほかに再生可能エネルギーの納付金として1670億円を国に支払うが、賦課金と相殺するため利益には影響しない。
ここでポイントになるのが、収入で計上した燃料費調整額7450億円と、支出で計上した燃料費の減少額1兆355億円の差額だ。本来ならば同程度になるはずだが、燃料費と燃料費調整額のあいだには4カ月のずれ(タイムラグ)が発生する。
このため化石燃料の輸入価格が下落しているあいだは差益が生まれて、東京電力の場合には年間で2905億円も利益をもたらした。特に2015年度の後半に原油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格が低下した効果によるものだ(図4)。
東京電力の2015年度の営業利益は連結ベースで3722億円だった。そのうちの8割近くが燃料費調整額のタイムラグによる差益である。ただし2016年に入ると原油の輸入価格が上昇し始めて、LNGの価格下落も小幅になってきたため、このような差益は2016年度になると期待しにくい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.