大型風車22基で4万世帯分の電力、海風を防ぐ保安林に風力発電所自然エネルギー

秋田県が所有する日本海沿岸の保安林で大規模な風力発電所の建設工事が始まる。22基の大型風車を設置する計画で、発電能力は県内最大の66MWに達する。2019年6月までに運転を開始して、年間に4万世帯分の電力を供給できる。売電収入は30億円を超える見込みだ。

» 2016年05月25日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 風力発電所を建設する場所は、秋田県の男鹿(おが)半島から南に向けて延びる海岸にある(図1)。一帯には日本海から吹きつける風を防ぐための保安林が広がっていて、その中に風力発電所を建設する計画だ。秋田県が所有する保安林を民間の発電事業者に貸し付ける。

図1 風力発電所の建設予定地。出典:ウェンティ・ジャパン、三菱商事、シーテック

 発電事業者は「秋田潟上(かたがみ)ウインドファーム合同会社」である。地元で風力発電を推進するウェンティ・ジャパンを中核に、三菱商事グループと中部電力グループが共同で設立した。ウェンティ・ジャパンは秋田県の公募で事業者に選ばれて、保安林のうち360万平方メートルを借り受けて風力発電事業を実施することになっていた(図2)。

図2 秋田県が風力発電事業者に貸し付ける用地。出典:秋田県産業労働部

 長さが6キロメートルに及ぶ細長い保安林の中に合計22基の大型風車を設置する。1基あたり3MW(メガワット)の発電能力があり、全体では66MWに達する。現在のところ秋田県内の風力発電所では「ユーラス由利高原ウインドファーム」の51MWが最大で、それを上回る規模になる。

 2016年9月から建設工事に入って、2019年6月までに運転を開始する予定だ。年間の発電量は1億4200万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して4万世帯分になる。秋田市の総世帯数(13万6000世帯)の3割に相当する電力を供給できる。

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて東北電力に売電する。1kWhあたりの買取価格は22円(税抜き)で、年間の売電収入は31億円になる見通しだ。買取期間の20年間の累計では620億円にのぼる。一方で発電所の建設にかかる総事業費は200億円を超える。

 秋田港の周辺は年間を通して平均6.5〜7.5メートル/秒の風が吹くため、風力発電に適した場所である(図3)。秋田潟上ウインドファームの想定では設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)が24.6%になり、風力発電の標準である20%を大きく上回る。

図3 秋田港の年間平均風速。出典:秋田港・能代港再生可能エネルギー導入検討協議会(NEDOの資料をもとに作成)

 同じ保安林の北側では、ウェンティ・ジャパンとともに秋田県から事業者に選ばれた「A-WIND ENERGY」も建設計画を進めている。秋田銀行などが設立した地元の風力発電会社で、最大19基の風車を設置して47MWの発電所を建設する予定だ。現在は大規模な風力発電所の建設前に必要な環境影響評価の手続きの最終段階にある。

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