大規模な地熱発電所を増やす、開発リスクを低減する掘削技術も再生可能エネルギーの拡大策(4)(1/2 ページ)

日本には世界で第3位の地熱資源量があるものの、発電に利用している割合は極めて少ない。地熱発電の拡大に向けて制度改革や規制緩和が進み、ようやく全国各地に開発プロジェクトが広がってきた。規模の大きな地熱発電所を低リスクで建設できるように、新しい掘削技術の開発も始まる。

» 2016年06月23日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第3回:「中小水力発電はコストダウンで普及、低い落差でも電力を作り出す」

 再生可能エネルギーの中で開発が最も遅れているのは地熱である。固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)の認定状況を見ても、地熱だけが極端に少ない。つい最近まで地熱資源が豊富な国立・国定公園の区域内で地熱発電所の建設を規制していたほか、温泉地でも発電設備の導入に反対する意見が根強くあったからだ。東日本大震災を機に再生可能エネルギーの重要性が高まり、政府は国立・国定公園内の規制緩和に乗り出した。

 一般に地熱発電所を建設するためには地下の掘削調査から始める必要があり、開発工程が長期に及ぶ。2017年度に改正するFIT法では数年先の買取価格を決めて地熱発電の事業性を判断しやすくする。それに加えて開発リスクを低減するための掘削技術の開発や全国規模で支援体制の整備も進めていく(図1)。

図1 地熱発電に関するFIT(固定価格買取制度)法改正と拡大策。出典:資源エネルギー庁

 大規模な地熱発電所になると、運転を開始するまでに10年以上かかる。最初は地下の地熱資源量を調査するのに5年程度、次いで環境影響評価に3〜4年、そして発電設備の建設にも3〜4年を必要とする(図2)。この間に十分な量の地熱資源を確保できないこともあれば、地元の反対で建設を断念しなくてはならないケースもある。ほかの再生可能エネルギーと比べて開発リスクが大きいため、発電事業者も二の足を踏みがちだ。

図2 地熱発電の開発期間(画像をクリックすると運転開始までの流れを表示)。出典:資源エネルギー庁

 それでも固定価格買取制度が始まったことによって、地熱資源が豊富な火山地帯を中心に発電所の建設プロジェクトが広がってきた。国立・国定公園の区域内でも開発案件が増えている(図3)。このうち環境影響評価を必要としない出力7500kW(キロワット)未満の地熱発電所が福島県や熊本県で相次いで運転を開始した。

図3 全国に広がる地熱発電所の開発プロジェクト(2015年3月時点、画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 地熱発電所の開発にあたっては、地下に存在する地熱資源の把握が欠かせない。発電事業者にとっては多額のコストがかかるうえに、十分な資源量を確認できる成功率は決して高くないのが現状だ。こうした地熱資源調査のリスクを低減するために、政府は「ヒートホール掘削」と呼ぶ新しい手法を普及させる方針だ。

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