電気料金の誤請求が1646件にも、東京電力のシステム不具合で電力供給サービス(1/2 ページ)

5月中旬に明らかになった東京電力の「託送業務システム」の不具合がますます市場を混乱させる状況を招いている。旧式の電力量計と新型のスマートメーターで異なる電力使用量の算定方法を混同した結果、1646件にのぼる需要家の使用量データを不正確なまま小売電気事業者に送っていた。

» 2016年06月27日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

既報(6月20日):「東京電力の料金通知の遅れ、解消の見通し立たず9月以降も続く」

続報(7月4日):「いつまで続く東京電力のシステム不具合、根本的な解決策が見えず」

 東京電力の送配電事業会社である東京電力パワーグリッドが毎週のように深刻なトラブルを公表する異常な事態だ。6月24日には、小売電気事業者25社に対して需要家の電力使用量を不正確なデータで通知していたことを明らかにした。その数は1646件にのぼり、小売電気事業者が需要家に過大な電気料金を請求してしまった可能性がある。

 そもそもの問題は東京電力が小売全面自由化に対応して稼働させた「託送業務システム」の不具合にある。システムの不具合は何カ所かで発生している。そのうちの1つは需要家に設置されているメーターが旧式の電力量計なのか新型のスマートメーターなのかを正確に把握できない点にある(図1)。

図1 需要家のメーター(計器)の情報を正しく取得できない不具合(画像をクリックすると契約変更の状態も表示)。DB:データベース。出典:東京電力パワーグリッド

 4月1日に始まった小売全面自由化によって東京電力から小売電気事業者に契約を変更した場合には、対象の需要家にスマートメーターを設置する必要がある。東京電力の小売事業会社である東京電力エナジーパートナーが新しい自由料金プランで獲得した需要家も同様だ。メーターの切り替え工事は送配電ネットワークを担う東京電力パワーグリッドが請け負うことになっている。

 ところが実際に契約を変更した需要家に対して、東京電力パワーグリッドのスマートメーターの設置工事が大幅に遅れて、旧式のメーターのまま小売電気事業者や東京電力エナジーパートナーに契約変更した需要家が大量に発生している。そうしたスマートメーターの設置遅延に託送業務システムの不具合が重なり、誤った電力使用量を通知する事態に陥ったものと考えられる。

 毎月の電気料金のもとになる電力使用量の算定方法は、旧式のメーターと新型のスマートメーターでは異なる。検針員がメーターの数値を読み取る旧式の場合には、前回の検針日と比べた差分が電力使用量になる。これに対して自動で計測できるスマートメーターでは毎月の計量日が決まっている(図2)。

図2 検針期間の違いによる電力使用量の重複算定。「検針日制」は旧式の電力量計に、「計量日制」は新型のスマートメーターに適用するのが正しい。出典:東京電力パワーグリッド

 1646件の誤ったデータは2つの算定方式を取り違えた結果によるものだ。本来ならば旧式の算定方式で電力使用量を計算しなくてはならない需要家に対して、新型のスマートメーターの算定方式で計算したため、検針期間のずれによって5月分の電力使用量を4〜7日間も重複して算入してしまった。

 すでに誤ったデータを受け取った25社の小売電気事業者は、需要家に対して電気料金を過大に請求した可能性があるわけだ。東京電力パワーグリッドは6月24日以降、正しい電力使用量のデータを小売電気事業者に通知する予定である。とはいえ契約変更の直後に起こった電気料金の誤請求は、自由化に期待を寄せた需要家のあいだに不信感と不安感を募らせることになりかねない。

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