四国電力が約5年ぶりに原子力による「伊方発電所」の3号機の発電を再開した。発電能力が89万kWある大型機の運転によって、燃料費とCO2排出量を一挙に削減する狙いだ。2016年度の第1四半期に電力会社10社のうち唯一の赤字に陥り、厳しい経営状況の立て直しを迫られている。
東日本大震災の発生後で4カ所目になる原子力発電所が動き出した(2カ所は再び停止中)。愛媛県にある四国電力の「伊方(いかた)発電所」の3号機が8月15日の午後2時18分に送電を開始した(図1)。震災直後の2011年4月から定期検査に入ったまま運転を停止していたため、5年4カ月ぶりの再開である。
発電再開にあたって佐伯勇人社長は「四国における安定的かつ低廉な電力供給を支える基幹電源の発電を再開できたことは感慨深く、当社にとりましても事業運営の安定化の観点から大変意義あるもの」とのコメントを発表した。実際には地域の電力供給よりも四国電力の経営にメリットがある。
先ごろ電力会社10社が発表した2016年度の第1四半期(4-6月期)の決算で、四国電力だけが赤字に転落したインパクトは大きい。本業のもうけを示す営業利益が前年同期に48億円の黒字だった状態から一気に84億円の赤字に陥ってしまった(図2)。しかも震災後に電力会社の収益を圧迫していた燃料費は125億円も減少したにもかかわらずだ。
一方で2015年8月から原子力発電所を再稼働させた九州電力は10社の中で最大の167億円にのぼる増益を果たした。各社とも販売量が縮小して売上高の減少が続く中で、原子力発電所の再稼働による燃料費の削減に頼る。ただし原子力は安全対策費が膨大にかかり、定期点検の頻度も多いことから、長期にわたって収益を安定させる効果を期待できるかは疑問である。
特に周辺地域の住民や自治体からの反発は根強い。実際に伊方発電所の運転停止を求める裁判が愛媛県内のほか広島県や大分県でも起こっている。政府が指定した災害対策重点区域には愛媛・山口2県の8市町が含まれていて、対象地域の住民の不安は再稼働で増幅した(図3)。関西電力の「高浜発電所」のように住民の反対によって運転停止を余儀なくされる可能性もある。
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