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» 2016年08月23日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2016年版(18)富山:急流に展開する小水力発電の効果、全国2位のエネルギー包蔵量を生かす (1/3)

古くから水力発電が盛んな富山県には流れの急な川が多く、年間を通して大量の雨や雪が膨大な水力エネルギーをもたらす。現在も川やダムのエネルギーを生かして、小水力発電の導入プロジェクトが活発に進んでいる。水量に合わせてさまざまなタイプの発電設備が相次いで運転を開始した。

[石田雅也,スマートジャパン]

 富山県は南側に標高3000メートル級の立山連峰がそびえる一方、北側の富山湾の海底は1000メートル以上の深さがある。その間の高低差4000メートルの地形が全国でも有数の水力エネルギーを生み出す。高い山から流れる川は急な場所が多く、黒部川をはじめ治水用や発電用のダムが数多く造られてきた(図1)。

図1 富山県の主要な河川の勾配(上)、月別の平均降水量(下)。出典:富山県生活環境労働部

 県内で稼働中の水力発電所が供給する電力量は年間に100億kWh(キロワット時)を超えて、47都道府県の中で最大だ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して280万世帯分にのぼり、富山県の総世帯数(39万世帯)の7倍に匹敵する。さらに水力エネルギーの包蔵量(利用可能量)は岐阜県に次いで第2位で、まだ利用可能なエネルギーが30億kWh以上も残っている(図2)。

図2 水力エネルギーの包蔵量と開発電力量。GWh:ギガワット時(100万キロワット時)。出典:富山県商工労働部

 新たに取り組んだ水力発電の代表的な例が「片貝別又(かたかいべつまた)発電所」である(図3)。県の東部を流れる片貝川は流れが急なことで知られている。川の上流から約1キロメートルの導水路を敷設して、下流にある発電所まで水を送り込む。この方式で水流の落差は298メートルに達する。

図3 「片貝別又発電所」の全景(上)と内部(下)、それぞれ画像をクリックすると拡大。出典:北陸電力

 発電能力3000kW(キロワット)で2015年11月に運転を開始して、2016年4月から4500kWに引き上げた。年間の発電量は1830万kWhになり、一般家庭の5000世帯分に相当する。最大で毎秒1.8立方メートルの水量を発電に使うことができる。特に春の融雪期に水量が増加する。

 この中規模な水力発電所は北陸電力が建設・運転する。一方で関西電力が小規模な水力発電所を2015年11月に稼働させた。関西電力は「クロヨン」で有名な「黒部川第四発電所」をはじめ、富山県内に数多くの水力発電所を運転している。新たに稼働した「出し平(だしだいら)発電所」は関西電力が所有するダムの直下に建設した(図4)。

図4 「出し平発電所」の位置。P/S:水力発電所。出典:関西電力

 ダムから下流にある2カ所の大規模な水力発電所に水を供給するほかに、下流の自然環境を守るため維持流量を放流している。この維持流量を生かして、37メートルの水流の落差で発電する仕組みだ。ダムの壁面から発電所までを水圧鉄管でつなぎ、最大520kWの電力を供給できる(図5)。

図5 「出し平発電所」の設備構成(上)と外観(下)。出典:関西電力

 年間の発電量は171万kWhを想定していて、一般家庭の480世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は38%で、小水力発電の標準値60%と比べると低い。維持流量が大幅に変動して発電量が変わるためだ。出し平発電所では流量に合わせて発電機の回転速度を変えながら安定して運転できるシステムを導入した。

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