東京電力のデータ通知の遅延は改善せず、年内の問題解決むずかしく電力供給サービス(1/2 ページ)

5月に表面化した東京電力によるデータ通知遅延の問題は、3カ月が経過した現在も改善の兆しが見えない。利用者に電力使用量を通知できていない件数は8月19日の時点で1万8500件にのぼっている。問題の原因になっている託送業務システムの不具合は年内に解消できない可能性が高まった。

» 2016年08月24日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

既報(8月9日):「東京電力の対応に小売電気事業者の不満、協定完了は2割強にとどまる」

続報(9月9日):「東京電力のデータ通知遅延は一進一退、使用量の不明が5000件以上に」

 東京電力パワーグリッド(東京電力PG)は電力使用量の通知が遅延している問題に関して、最新の状況を8月22日に電力・ガス取引監視等委員会に報告した。通知の遅延は家庭の利用者を中心に、需要データと発電データの両方で発生している。8月19日の時点で需要データの未通知は1万8503件、発電データの未通知は6877件にのぼり、前回報告時の8月2日の状態からほとんど減っていない(図1)。

図1 需要データ(上)と発電データ(下)の未通知件数。出典:東京電力パワーグリッド

 というのも遅延の原因になっている託送業務システムの不具合が解消できていないからだ。月が替わると新規に通知するデータの処理をスムーズに実行できず、以前のデータの未通知を人手で解消する一方で新たな未通知が発生し続けている。東京電力PGが委員会に報告したところによると、遅延の原因は主に3つある(図2)。

図2 データ通知の遅延が発生する原因と対策。出典:東京電力パワーグリッド

 そのうち2つは人的なミスとはいえ、もともとの原因は利用者の契約情報や使用量などを管理する託送業務システムの不具合によるものだ。利用者が東京電力から小売電気事業者に契約を変更した場合には、メーターを旧式から新型のスマートメーターに交換する必要がある。その際にメーターの登録情報をシステムで適切に処理できていなかった。

 さらに深刻な問題は3つ目の原因に挙げられているシステムの不具合が現在も解消できていないことだ。託送業務システムの内部には利用者ごとの使用量などを格納する複数のデータベースがあるが、それぞれのデータベースにメーターの登録情報が正しく反映できなくなっている(図3)。

図3 託送業務システムで発生している4カ所の不具合(画像をクリックすると拡大)。DB:データベース、MDMS:メーターデータマネジメントシステム。出典:東京電力パワーグリッド

 旧式と新型のメーターでは検針期間が異なるため、メーターの登録情報が間違っていると、毎月の電力使用量を正確に算定できない。現在は人手で補正する作業を続けているものの、大量に発生するデータの処理を期日に間に合わせることはむずかしい状態だ。システムの不具合を解消できない限り、この問題は今後も続いていく。

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