電力会社が小売全面自由化で攻勢かける、新電力より単価を安く動き出す電力システム改革(67)(1/2 ページ)

小売全面自由化を機に、新電力よりも電力会社のほうが契約変更を積極的に進めている。5月末の時点で電力会社と新電力を合わせた契約変更件数は全体の5%を超えて、そのうち半数以上は電力会社の認可料金から自由料金へ切り替えたケースだ。販売単価も新電力と比べて5円以上も安い。

» 2016年09月01日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第66回:「ネガワット取引のシステムが間に合わず、直接協議方式で2017年4月に開始」

 鳴り物入りで始まった小売全面自由化だが、実際に契約変更で攻勢をかけているのは電力会社だ。2016年4月から「みなし小売電気事業者」になって、従来の規制料金メニューと自由料金メニューの両方を販売する。自由料金には以前から販売してきた時間帯別プランなどに加えて、自由化後に開始した携帯電話やLP(液化石油)ガスと組み合わせた割引プランもある。

 資源エネルギー庁が小売全面自由化の進捗状況を分析した結果から、電力会社(みなし小売)の自由料金メニューの販売量が新電力を圧倒していることが明らかになった。電力会社の自由料金メニューは5月に60億kWh(キロワット時)を販売したのに対して、新電力はわずか1.7億kWhにとどまっている(図1)。

図1 契約タイプ別の販売電力量・販売額・単価・契約件数(2016年5月実績)。出典:資源エネルギー庁

 しかも驚くべき点は販売単価の差だ。新電力の単価が1kWhあたり21.9円に対して、電力会社の自由料金メニューでは16.2円になっている。実に5円以上の開きがある。ただし新電力の単価も電力会社の規制料金メニューと比べれば2円弱は安い。小売全面自由化が電気料金を引き下げる効果をもたらしたことは間違いない。

 料金メニューの違いによって需要家あたりの販売量にも差が出ている(図2)。電力会社の規制料金メニューでは月間の平均販売量が211kWhで、自由料金では255kWhに増加する。新電力になると300kWh以上が多くなる。新電力が提供する料金プランの大半が300kWh以上で割安になるためだ。

図2 契約1件あたりの販売電力量(2016年5月実績)。出典:資源エネルギー庁

 電力会社の自由料金メニューを利用している需要家のうち、自由化後の新しい料金プランに切り替えた件数は全国を合わせると5月末の時点で171万件にのぼる。一方で新電力に契約を切り替えたスイッチングの件数は7月末の時点で148万件になった(図3)。両方を合計した契約変更数は319万件で、家庭を中心とする低圧分野の需要家(2015年度で6253万件)の5.1%を占める。

図3 スイッチング申込件数(画像をクリックすると地域別の実数も表示)。出典:資源エネルギー庁
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