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» 2016年10月13日 07時00分 UPDATE

自然エネルギー:牛の糞尿で発電して下水処理場へ、地下水を汚さないバイオマス活用法 (1/2)

酪農が盛んな静岡県・富士宮市の高原で新たなバイオマス発電の取り組みが始まる。牛の糞尿をメタン発酵させたバイオガスで発電して市内の下水処理施設に電力を供給する一方、発酵後に残る消化液も下水と同様に処理する試みだ。消化液を牧草地に散布する量を抑えて地下水の汚染を防ぐ。

[石田雅也,スマートジャパン]
図1 朝霧高原の風景。出典:富士開拓農業協同組合

 富士山の西側のふもとに広がる朝霧高原は避暑地として人気の高い場所で、広大な土地では4000頭を超える乳牛を飼育している(図1)。50軒ほどの酪農家が参画する富士開拓農業協同組合が中心になって、牛の糞尿を利用した「環境調和型バイオマス資源活用事業(富士宮モデル)」に取り組んでいく。。

 この事業は環境省と国土交通省が支援するプロジェクトで、家畜の糞尿や食品廃棄物を利用してバイオマス発電を実施しながら、環境負荷の低い事業モデルを確立する狙いがある。糞尿や廃棄物をメタン発酵させてバイオガス(消化ガス)を発生させた後に残る消化液は、農地や牧草地に肥料として散布するケースが多い。ところが液肥が地下水を汚染してしまう環境問題が顕在化し始めた(図2)。

図2 「環境調和型バイオマス資源活用事業」の実施イメージ(画像をクリックすると事業の全体像を表示)。出典:環境省

 そこで液肥を適正に処理できる下水処理施設に輸送して浄化する一方、バイオガスで発電した電力と熱も下水処理施設に送って利用する。液肥の散布量を減らして地下水の汚染を防ぐのと当時に、下水処理施設で再生可能エネルギーを活用してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減する“一石二鳥”の効果が期待できる。

 このモデル事業の対象に選ばれたのが富士宮市の朝霧高原で、2018年度まで実証プラントを運用して「富士宮モデル」を構築する計画だ。実証プラントには乳牛の糞尿を受け入れる前処理設備をはじめ、発酵槽と発電設備、液肥を貯留・脱水して下水処理施設に搬出する設備などで構成する(図3)。

図3 「富士宮モデル」のバイオマスプラント(画像をクリックすると事業の全体像を表示)。出典:富士開拓農業協同組合

 原料になる乳牛の糞尿は1日あたり350頭分に相当する20トンを予定している。糞尿を発酵させて作るバイオガスを使って、50kW(キロワット)の電力を作ることができる。このうち20kWをプラント内で消費した後に、残りの30kWを下水処理施設へ送電する。

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