福島第一原子力発電所から10キロメートル圏内にある富岡町で、復興に向けた大規模なメガソーラーの建設プロジェクトが相次いで動き出した。土壌の汚染が深刻な農地にメガソーラーを建設して、農業に代わるエネルギー産業を創出する狙いだ。売電収入を地域の復興にも生かす。
福島県の太平洋沿岸にある富岡町では、現在も約1万5000人の町民が県内・県外で避難生活を送っている。福島第一原子力発電所に近い北東部は放射線量が多いために「帰還困難区域」に指定されているが、そのほかの場所は「居住制限区域」や「避難指示解除準備区域」になって復興と帰還に向けた取り組みが進んできた(図1)。
町の北西部には農地が広がっている。農業の再開と再生可能エネルギーの導入を柱に地域産業の活性化を目指す方針だ(図2)。農地のうち土地の汚染が深刻な場所や以前から放棄地になっていた場所を太陽光発電の事業用地に転換して、農業に代わるエネルギー産業を創出していく。
2015年11月に富岡町が策定した太陽光発電事業計画では、3カ所に発電所の建設を決めた(図3)。いずれも面積が40万平方メートル程度の広大な農地で、発電能力が20〜30MW(メガワット)級の大規模なメガソーラーを予定している。このうち2カ所で建設工事が始まった。
町内の大石原・下千里地区では「富岡復興メガソーラー・SAKURA」が2016年7月に着工した。40万平方メートルの用地に30MWのメガソーラーを建設する(図4)。富岡町と福島発電、JR東日本エネルギー開発が共同で設立した「福島復興エナジー」が発電事業者になる。「SAKURA」は富岡町が誇る桜になぞらえて、地域復興のシンボルにする願いが込められている。
2017年12月に運転を開始する予定で、年間の発電量は3300万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して9200世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に10億円を超える収入を得られる見込みだ。収入の一部は「福島県再生可能エネルギー復興推進協議会」を通じて地域の復興に生かす。土地の地権者である町民には地代が入る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.