これだけは押さえておきたい電力業界の今とこれから3分で分かるこれからの電力業界(1)(1/3 ページ)

急速に変化、多様化しつつある電力業界。特にこれから一気に市場が広がり、ビジネスモデルも多様化していくと思われる「電力小売業界」への就職・転職を目指す方の先導役として役立つ連載がスタート。実際に電力業界への就職・転職を目指している方だけでなく、新たな拡がりをみせようとしている電力ビジネスの今と未来を把握したいと考えているビジネスパーソンも必見だ。

» 2016年11月25日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

電力業界に起きつつある大変革

 1990年代、インターネットが世の中に急速に広がり、私たちの社会と生活は大きく変わりました。そして今、電力・エネルギーの世界でかつてのインターネット革命にも似た、大きな変革が起きつつあります。その変革によってこれから先、日本だけでなく世界の産業、ビジネス、私たちの暮らしが驚くべき変化を迎えると予想されています。

 この電力・エネルギー産業、業界の変化の鍵を握る重要な要素として、2016年4月から開始された「電力小売全面自由化」が挙げられます。この自由化によって新たな巨大市場が生まれました。電力自由化はこれまで段階的に進められてきましたが、今回の小売全面自由化、そして2020年に予定されている「発送電分離」によって、これまで国を挙げて進められてきた日本の「電力システム改革」が完了することとなります。

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 さらに、スマートメーター、VPP(仮想発電所)、ネガワット発電など、さまざまな新しい機器やテクノロジー、システムの普及・導入も、業界の変化・変革にとって大きな鍵となります。こうしたテクノロジーやシステムの導入、さらにはIoTの発達・普及の影響もあり、かつて経験したことのない電力・エネルギーの大改革時代を迎えつつあるのです。それは少々大げさに言えば、かつてペリー提督の黒船来航が日本に与えたインパクトと同じような大きなインパクトであり、江戸時代が明治時代に変わったのと同様の劇的な変化と言っても過言ではないでしょう。

電力自由化によって何が変わったのか?

 今、電力業界、特に電力小売業界に具体的にどのような変化・変革が起きつつあるのか、またそのバックグラウンドを理解するためには、「電力小売全面自由化」について、その意味と意義をもう一度復習しておく必要があるでしょう。

 今回の電力自由化を一言で説明するなら、新しく設立された電力会社が「一般家庭や個人商店など全ての電力利用者に電気を売ることができるようになった」、また消費者側でも「自由に電力会社を選択することができるようになった」ということです。

 この電力自由化で広がった市場規模は、7.5兆〜8兆円と言われています。需要家(電気を使う人)の件数で見ても約8500万件が自由化の対象となりました。コンビニエンスストアの市場規模が10兆円程度ですので、その大きさに近いとても大きな市場が開放されたことになります。

 今回の電力自由化において、ビジネス面で注目を集めているのが新規参入の小売電気事業者、いわゆる「新電力」です。これまで電力業界とはあまり関わりのなかった会社や、新たに設立された会社が電力販売を事業として拡げていこうと次々と参入してきたのです。こうした新電力会社の登録は数年前までは30〜40社ほどでしたが、今や登録件数で約350社。近い将来400社ほどになると予測されています。

 電気の小売事業には大手ガス会社や石油元売などのエネルギー系、商社系の大企業も参入していますが、その企業規模は大小さまざまです。「少人数の社員で太陽光発電をやっています」といった小さな会社も登録しています。また通信関連、IT系、小売関連、生協のようなコミュニティー系など、さまざまな分野の会社がひしめいています。

 新規参入の電力会社の中には、一般家庭への販売は何かと手間やコストがかかるので「うちは一般向け小売はやらず、法人だけに限定してやります」というところや、「この地方のこういうコミュニティーだけに限定して売ります」といったところも出てきています。

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