買取制度に2つの新区分、中小水力とバイオマス発電で自然エネルギー(1/2 ページ)

2017年度から中小水力発電とバイオマス発電に新たな区分が加わる。中小水力では出力5000kW以上、バイオマスでは一般木質を燃料に利用する出力2万kW以上を切り分けて、それぞれ従来よりも買取価格を引き下げる方針だ。太陽光発電と風力発電に続いて買取価格の低減が進んでいく。

» 2016年11月30日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 政府が11月29日に開催した「調達価格等算定委員会」で、中小水力発電とバイオマス発電に新区分を設ける案が固まった。現行の固定価格買取制度では、中小水力発電は出力の規模によって3つの区分に、バイオマス発電は燃料の種類によって5つの区分に分かれている。

 このうち中小水力発電で規模が最も大きい出力1000kW(キロワット)以上3万kW未満の範囲を2つに分割する。資源エネルギー庁が収集した発電設備の実績データを調査したところ、出力が5000kW以上の設備では導入に必要な資本費が低くなる傾向が明らかになった。

 現行の買取価格の基準になっている資本費の想定は出力1kWあたり85万円である。これに対して調査データでは5000kW以上の平均値で69万円、中央値で52万円と想定を2〜4割も下回っている(図1)。一方で1000kW以上5000kW未満では平均値が93万円、中央値が85万円で想定と同等だった。

図1 中小水力発電(出力1000kW以上3万kW未満)の資本費。出典:資源エネルギー庁

 毎年度の買取価格は資本費に加えて発電設備の運転維持費や設備利用率(出力に対する実際の発電量)を加味して決めることになっている。中小水力発電の運転維持費については、特殊なケースを除いて出力による差はほとんど見られなかった(図2)。

図2 中小水力発電(出力1000kW以上3万kW未満)の運転維持費。出典:資源エネルギー庁

 こうした要件をもとに、2017年度から出力5000kW以上の中小水力発電を新たな区分に設定する。現行の買取価格は導水路を新設する場合には24円(税抜き)だが、20円以下に引き下げる可能性が大きい。

 残る出力1000kW未満の2つの区分は買取価格を据え置く。200kW未満と200kW以上の資本費を見ると、いずれも従来の想定を上回っている。200kW未満の資本費は1kWあたり100万円を想定しているが、調査データでは補助金の対象案件が多い100kW未満を除くと平均値が139万円、中央値が133万円と高い(図3)。

図3 中小水力発電(出力200kW未満)の資本費(上)、同(200kW以上1000kW未満)の資本費(下)。出典:資源エネルギー庁

 200kW以上になると想定の80万円に対して、既設の水路を利用する場合や特殊なケースを除くと平均値は103万円で、中央値は94万円だった。ただし運転維持費が200kW未満と200kW以上の両方で基準値を下回っている(図4)。資本費と運転維持費を組み合わせると、2017年度の買取価格を現行のまま据え置くことが妥当と考えられる。

図4 中小水力発電(出力200kW未満)の運転維持費(上)、同(200kW以上1000kW未満)の運転維持費(下)。出典:資源エネルギー庁
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