世界の再生可能エネルギーの最新動向について、自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長が東京都内で講演した。太陽光と風力が各地域で拡大して、発電コストが火力や原子力を下回る状況になってきた事例を紹介するとともに、導入量が増加しても送配電の問題は生じないと語った。
自然エネルギーの専門家でスウェーデンのエネルギー庁長官を務めたトーマス・コーベリエル氏(自然エネルギー財団理事長、スウェーデン・チャルマース工科大学教授)が「下がり続ける自然エネルギーのコストとパリ協定後の世界エネルギー事情」をテーマに、世界各地の導入事例や統計データに基づいて最新動向を解説した。「もはや経済合理性の面からも、太陽光と風力が火力や原子力よりも優位になった」と指摘する。
導入量が急速に拡大したことに伴って、太陽光や風力で発電した電力の取引価格が一気に下がり始めている。太陽光発電では1kWh(キロワット時)あたり3円を切る価格で売買が成立する事例も出てきた。「2016年は太陽光と風力のコストが大幅に下がった年として記憶されるだろう」。
太陽光発電の導入量は2010年から加速がついて伸びている。英国のエネルギー会社BPがまとめたデータによると、2015年の全世界の導入量は過去最大の5000万kW(キロワット)にのぼり、累計では2億3000万kWに達した(図1)。前年からの増加率は28%の高い水準だ。
国別では中国の伸びが最も大きくて、1年間に1500万kW増えている。累計の導入量もドイツを抜いて世界のトップに立った(図2)。日本が1200万kWの増加で中国に続く。「2016年には累計の導入量でも日本がドイツを抜いて第2位になるかもしれない」(コーベリエル氏)。
太陽光発電が世界各地で拡大する背景には、コストの大幅な低下がある。米国の金融情報サービス会社Bloombergが調査・分析したレポートによると、太陽光発電モジュールの価格が2008年から急速に低下して80%も安くなっている(図3)。2011年には1kWあたり1000ドル(約11万円)を切る水準まで下がった。
この結果、大規模なメガソーラーを安価に建設できるようになり、発電した電力の取引価格も急速に安くなっている。コーベリエル氏は以下のような最新事例を挙げて、想定以上に太陽光発電のコストが下がっていることを示した。
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