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» 2016年12月12日 11時00分 UPDATE

法制度・規制:原子力事業の弊害さらに増大、政府と東京電力の責任を国民に転嫁へ (1/2)

政府は東京電力の福島第一原子力発電所の事故に関連する費用が従来の想定から2倍に拡大して22兆円に達する見通しを明らかにした。東京電力が経営改革を進めても費用の全額を負担することはむずかしく、不足分は新電力の利用者を含む全需要家から回収する方針だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

 12月9日に開催した「東京電力改革・1F問題委員会」で、福島第一原子力発電所(略称:1F)の事故に関連する費用の見通しが新たに示された。廃炉・賠償・除染にかかる費用は当初7兆円と見積もっていたが、2013年12月には11兆円に増え、さらに3年が経過して22兆円へ倍増してしまった。東京電力の経常利益(2015年度:3259億円)の67倍にのぼる巨額だ。

 内訳は廃炉費用が2兆円から8兆円へ、賠償費用が5兆円から8兆円へ、除染費用が4兆円から6兆円へ、それぞれ大幅に増える(図1)。総額22兆円のうち、東京電力が7割に相当する16兆円を負担する一方、原子力発電所を保有する他の電力会社が4兆円、国が2兆円を負担する案を政府は提示した。

図1 福島第一原子力発電所の事故に関連する費用(注釈は省略)。出典:経済産業省

 合わせて22兆円になるが、賠償費用は新電力にも0.24兆円を負担させる方針だ。この点に関して、委員会が策定した骨子案では次のように説明している。

  • 賠償に係る資金は、事故事業者と原子力事業者の負担金から充当されるという原則は変えない。ただし、賠償制度は2011年に機構法(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)で追加措置。福島事故への対応に関しては準備不足。この制度不備を反省しつつ、電力の全需要家から公平回収する仕組みを検討する。

 いったい誰が反省すべきかと言えば、原子力事業を開始して以来の政府であり、事故のリスクを甘く見ていた電力会社である。事故に伴う巨額の費用の負担を国民に求めるのであれば、現政府の責任者と電力会社の責任者が国民に対して謝罪すべきであることは論を待たない。そのうえで国民の理解を求める必要がある。

 国民の負担増加は福島第一原子力発電所の事故費用にとどまらない。原子力発電所の廃炉費用に関しては、電力会社(原子力事業者)が電気料金で回収する制度になっている(図2)。従来は運転開始から60年以上で廃炉する規定を設けていたが、福島の事故後に原則40年以上に短縮した。そのために発電設備の資産償却と廃炉に必要な解体引当金が不足する。これも電気料金で回収することになる。

図2 原子力発電所の廃炉費用の負担制度。出典:経済産業省

 こうした早期の廃炉を政府は「例外」と呼び、電力会社だけではなく新電力からも託送料金(送配電ネットワークの使用料)に上乗せして徴収することを検討中だ。新電力を含むすべての需要家が各地域の原子力発電所の廃炉費用を負担しなくてはならない。

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