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» 2017年01月05日 09時00分 UPDATE

3分で分かるこれからの電力業界(4):電力×新規事業開発――大手異業種企業の新規参入 (1/3)

「電力小売業界」への就職・転職を目指す方に、急速に変化・多様化する業界動向を分かりやすく解説。今回からは業界を読み解くカギをトレンド別に分け、それぞれの「概要」「事例紹介」「会社選びのチェックポイント」「こんな人におススメ!」という4項目に分けて図解も交えながら説明していく。

[江田健二,スマートジャパン]

トレンドワード「電力×新規事業開発」

大企業ならではの安定した環境で思いきり新規事業にチャレンジできる!


ガス会社、商社、通信会社、鉄道会社……。異業種大手企業が次々と参入

 2016年4月の電力小売全面自由化によって家庭部門の市場が開放されるに伴い、さまざまな業種・業態の大手企業が電力市場に参入しました。新たに電力業界に参入してきた大手企業は、ガス会社、石油元売企業、商社系企業、IT・通信系企業、不動産・住宅関連企業、鉄道会社、家電メーカー、大手スーパー、ポイントサービス提携企業などさまざまな分野にわたりますが、参入目的は基本的に「新規事業開発」です。それぞれの企業が独自に持つサービスや顧客基盤を電力販売と連携させることにより、エネルギー分野に新たなビジネス市場を見出そうというわけです。

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 なかでもガス会社や不動産・住宅関連企業、通信系企業など、既に多くの顧客と接点を持っていて、しかも電力事業と親和性の高い企業は、電力会社の代理店のような形で市場に参入することが可能になりました。「うちの商品、サービスとセットで電気もどうですか?」という提案ができるようになったからです。

 以下は、異業種から新規参入した大手企業の例です。

  • 東京ガス、大阪ガスなど大手ガス会社
  • 昭和シェル石油
  • JXエネルギー(ENEOSでんき)
  • 東京急行電鉄(東急パワーサプライ/東急でんき)
  • KDDI(auでんき)
  • ソフトバンク(ソフトバンクでんき)
  • 楽天(楽天エナジー)
  • 丸紅(丸紅新電力)
  • 三菱商事とローソン(MCリテールエナジー)

本業の強みを生かす「セット販売」という手法

 先に述べたように、今回の電力小売自由化によって一般家庭にも電力を販売できるようになったため、新規参入企業はポイントサービスや他サービス・製品との「セット販売ビジネス」を拡大しつつあります。

 セット販売においては、たとえ電力単体の販売価格が高くても、セット全体の総合的な価格や価値でお得感を引き出すことができれば、市場を勝ち抜く可能性が高まります。これは、各社が持つ本業(既存のビジネス)の強みや魅力を利用して新たな市場を開拓する手法と言えます。

 こうしたセット販売ビジネスにおける価値は、電力や既存サービス・製品の販売量が増加するといったメリットのほかに「既存ビジネスの顧客流出を防ぐ」といったメリットもあります。既に自社のサービスを利用してもらっている顧客に対し、魅力的な電力とのセット販売商品を提示できれば、付随的に自社商品やサービスも継続して利用してもらえることになります。

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 特に長年にわたって培ってきた自社サービスとのセット販売は、他社が容易に模倣することができない、という点も大きな強みと言えるでしょう。電力単体の販売であれば価格競争の波に呑み込まれやすいので、各社は電源の調達先や自社内の運営改善で電力価格の競争に勝ち抜くことを目指しますが、そういった改善には限界があります。これに対して、本業を持つ異業種参入企業は、他社にまねできない魅力的なオプションを付け加えることにより、唯一のブランドを確立することができるのです。

 電力商品の開発において、「お得感」や「魅力」を、自社の持つリソースでいかに最大限引き出せるかは重要なポイントです。これからの新規参入の異業種企業には、複数のサービスや製品を組み合わせて、個別に購入するよりも安く価格を設定する「価格バンドリング」などさまざまなマーケティング手法を考慮し、またこれまでの自社のビジネス基盤や歴史をふまえて顧客の満足する商品を生み出していくことが求められるでしょう。

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