連載
» 2017年01月13日 09時00分 UPDATE

2017年のエネルギートレンド(4):電力を地産地消する動きが加速、原子力に依存しない分散型へ移行 (1/4)

日本の電力供給の構造が大きく変わり始めた。特定の地域に集中する大規模な発電所による供給体制から、再生可能エネルギーの電力を地産地消する分散型へ移行する。災害が発生しても停電のリスクが低く、新しい産業の創出にもつながる。特に原子力発電所の周辺地域で取り組みが活発だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

 現時点で原子力発電所が稼働している場所は全国で2カ所しかない。鹿児島県の薩摩川内市(さつませんだいし)と愛媛県の伊方町(いかたちょう)である。両県ともに住民の不安は根強く、原子力に依存しない地域社会を目指す動きがにわかに広がってきた。

 愛媛県では2015年に地元で発足した小売電気事業者の坊ちゃん電力に期待が集まる。「えひめを再生可能エネルギーの街にする」ことを目指して、「フリーソーラープロジェクト」を展開中だ。県内の工場で生産した太陽光パネルを住宅の屋根に無償で設置して、発電した電力を安く利用できる(図1)。余った電力は坊ちゃん電力が買い取って他の利用者に供給する。

図1 「フリーソーラープロジェクト」の導入イメージ。出典:坊ちゃん電力

 フリーソーラープロジェクトを通じて太陽光発電の導入量を増やしながら、放射能汚染のリスクがない電力を普及させていく。坊ちゃん電力は2017年度に1000カ所以上の住宅に太陽光パネルを設置する計画だ。すべての発電量を合わせても原子力発電所が供給する電力量と比べれば圧倒的に少ないものの、再生可能エネルギーの地産地消を推進する市民の輪は着実に広がっていく。

 原子力発電所に依存しない地域社会を構築する動きは滋賀県でも活発だ。2016年3月に「しがエネルギービジョン」を策定して、災害に強くて環境負荷の少ない社会に向けて対策を強化した(図2)。再生可能エネルギーの地産地消を通じて地域経済が循環すれば、地方創生にもつながる。

図2 「しがエネルギービジョン」の基本理念。出典:滋賀県県民生活部

 滋賀県の北部は原子力発電所が集中する福井県の若狭地域から10キロメートルほどの至近距離にある。今のところ福井県内の原子力発電所が再稼働する見通しは立っていないが、将来にわたって放射能汚染のリスクから逃れることはできない。再生可能エネルギーの発電設備を県内に拡大しながら、全国の先頭を切って原子力に依存しない社会を構築する意気込みは強い。

 東日本大震災の前に原子力発電所から供給を受けていた電力量に相当する分を、2030年までに消費量の削減と分散型の電源の増加で確保する方針だ(図3)。分散型の電源は再生可能エネルギーに加えて、家庭向けの燃料電池などを拡大していく。たとえ災害が発生して大規模な停電が起こっても、地域内の電源で電力の供給を続けることができる。

図3 滋賀県の電力消費量と電源構成の目標(画像をクリックすると拡大)。出典:滋賀県県民生活部

 滋賀県が積極的に取り組んでいる対策の1つが市民共同発電所の普及だ。市民が出資する方式で、学校や公共施設の屋根を利用して小規模な太陽光発電所を建設する(図4)。2016年3月末の時点で27カ所が稼働している。1カ所あたり10kW(キロワット)程度の発電設備が多く、災害時には避難所になって電力を供給する。

図4 「コナン市民共同発電所参号機」の外観。出典:滋賀県県民生活部
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.