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» 2017年03月13日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:温暖化対策にCO2フリー水素、2030年代のエネルギー源へ国の拡大戦略 (1/2)

政府は化石燃料に依存しないエネルギーの安定確保と温暖化対策の両面から、CO2排出量を削減できる水素エネルギーを飛躍的に拡大させる。再生可能エネルギーの電力から水素を製造するほか、海外の油田などで発生するガスから水素を製造して輸入する。製造コストの低減が最大の課題だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

 日本のエネルギー供給構造を水素で変革する取り組みが加速してきた。政府は1年前から検討を進めてきたCO2(二酸化炭素)フリー水素のロードマップを3月7日に公表した(図1)。2030年代には固定価格買取制度の対象から外れる発電設備が増えてくるため、CO2を排出しない再生可能エネルギーの電力を生かして水素を大量に製造する戦略だ。

図1 CO2フリー水素の拡大に向けたロードマップ(画像をクリックすると拡大)。FIT:固定価格買取制度、P2G:Power-to-Gas、Nm3:リューベ、ST:ステーション。出典:資源エネルギー庁

 国内と海外でCO2フリー水素を安価に製造できる技術開発に取り組む一方、CO2フリーの定義を明確にしてCO2排出量の削減に反映できる制度を整備していく。利用面では燃料電池自動車や燃料電池フォークリフトを国全体に普及させながら、水素から電力や熱に転換してエネルギーとして利用できるシステムも拡大させる。

 水素の製造方法は大きく分けて4通りある(図2)。現在の主流は化石燃料から作る方法と、製鉄などの工程で発生する副生水素を利用する2通りがあるが、いずれも製造に伴ってCO2を排出する。一方でCO2排出量の少ない製造方法には再生可能エネルギーの電力で水を電気分解するか、海外の油田などで未利用エネルギーから製造する方法がある。

図2 水素の製造方法とCO2フリー水素。出典:資源エネルギー庁

 政府はCO2フリー水素を具体的に規定するにあたって、製造段階だけではなく輸送・貯蔵から充填までを含むライフサイクル全体の排出量で規定する方針だ。CO2の排出量が最も多い天然ガスを改質して水素を製造した場合を基準に排出量の比率で判断する。

 かりにライフサイクル全体のCO2排出量が天然ガス改質と比べて50%以下であることを条件にすると、下水汚泥からバイオガスを発生させて水素を製造する方法や、塩水を電気分解して水素を製造する方法が該当する(図3)。このほかに風力発電や太陽光発電の電力で水を電気分解した場合もCO2排出量は50%以下になる。

図3 水素の製造・輸送・貯蔵・充填に伴うCO2排出量(画像をクリックすると拡大)。単位:CO2換算キログラム/ノルマルリューベ。CCS:CO2回収・貯留。出典:みずほ情報総研

 水素がCO2フリーかどうかによって、燃料電池自動車のCO2排出量も大きく変わってくる。都市ガスや天然ガスから製造した水素を利用すると、ハイブリッド自動車のCO2排出量と大きな差はつかない(図4)。化石燃料を主体にした電力で走る電気自動車よりもCO2排出量が多くなる可能性もある。

図4 自動車のCO2排出量。FCV:燃料電池自動車、NG:天然ガス、PHV:プラグインハイブリッド自動車、EV:電気自動車。出典:資源エネルギー庁(日本自動車研究所の資料をもとに作成)

 これに対して太陽光発電の電力で水を電気分解した水素で燃料電池自動車を走らせると、CO2排出量は電気自動車と比べても5分の1程度で済む。CO2排出量が最も低くなるのは、太陽光で発電した電力で電気自動車を走らせた場合だ。水素と違って輸送・貯蔵・充填時にもCO2をほとんど排出しないためである。CO2排出量の点では、再生可能エネルギーの電力を最大限に電気自動車で消費して、余剰分を水素に転換して燃料電池自動車に供給する方法がベストと言える。

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