奄美大島の北側にはトカラ列島の島々が点在している(図5)。その中で最も北にある口之島(くちのしま)の沖合では、世界でも最大級の海流発電プロジェクトが進行中だ。ガスタービン発電機などを得意とするIHIが東芝と共同で実証試験の準備に入った。
実証試験に使う海流発電システムは水中に浮遊させる方式だ。発電システムの両端に、2枚の羽根が回転して発電するタービンをペアで備えている(図6)。1枚の羽根の長さは11メートルもあり、2基のタービンを合わせて発電能力は100kWになる。システム全体の大きさは横幅が20メートルで、長さも20メートルに及ぶ。
この海流発電システムを海面から50メートル程度の深さに浮かべる。海底に沈めた重りからケーブルでつなぎ、空を飛ぶ凧(たこ)のように浮遊させながら海流を受けて羽根を回転させる仕掛けだ(図7)。海底にはケーブルの接続箱も設置して、発電した電力を海底ケーブルで島へ送ることができる。
口之島を含めてトカラ列島には東シナ海から黒潮が流れ込み、海流の速い場所が島の近くに広がっている(図8)。実証試験は口之島の沖合5キロメートルの海域で実施する予定だ。発電量や漁業に対する影響を評価して実用化を目指す。
水中浮遊式の海流発電システムは同じ海域に数多く並べて設置できるため、発電能力を効率的に増やせる点が特徴だ。日本の太平洋側には100キロメートル程度の幅で黒潮が流れている。海流発電を実用化できれば、陸地に近い海域で大量の電力を生み出すポテンシャルがある。
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