設備需要は頭打ちも、国内バイオマス市場は30年までに倍増自然エネルギー(1/2 ページ)

矢野経済研究所が国内のバイオマスエネルギー市場の推移予測を公表。市場全体は2020年度に向けて倍増し、さらに2030年度には3倍以上に拡大すると予測した。

» 2018年01月09日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 矢野経済研究所では、このほど国内のバイオマスエネルギー市場(エネルギー供給量および設備導入量)の調査を実施した。市場規模は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」導入を背景に順調に拡大している。2016年度比べ2020年度に倍増、2030年度には3倍以上に拡大する見込みだ。

国内バイオマスエネルギー市場の推移予測 出典:矢野経済研究所

 国内のバイオマスエネルギーは、従来より木質バイオマスの燃焼や有機廃棄物のメタン発酵ガス化などにより自家発電や熱(蒸気)として利用されていた。また、バイオディーゼルやバイオエタノールのバイオ燃料供給も、自動車用燃料などとして使われてきた。ただ、バイオマスエネルギーの利用では、原燃料や設備のコストが高くなることが普及課題であり、経済的に採算のとれるケースは限定的となることから、市場規模は小さかった。

 しかし、2012年にスタートしたFITにより、バイオマスエネルギーによる発電電力は20年間の買い取り対象となった。これにより、発電(売電)事業での採算がとれるようになり、バイオマス発電市場は急速に拡大している。特に、最近では、海外から木材チップ、木質ペレット、パームヤシ殻などを大量に輸入して発電する事業が増加している。また、バイオマス発電ではコージェネレーション(熱電併給)形態での導入も進むことから、従来よりのバイオマスボイラーに加えて、バイオマス熱(蒸気)供給市場も拡大が見込まれる。

 さらに、現状では、食料競合しない第2世代のセルロース系バイオマス原燃料や、工業的に量産が可能な微細藻類などの新しいバイオマス原燃料の技術開発が進められており、今後はバイオ燃料供給市場も拡大する。国内では、例えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、バイオジェット燃料の導入プロジェクトも進められている。

 こうした状況のもと、バイオマス発電市場、バイオマス熱(蒸気)供給市場、バイオ燃料供給市場を合わせたバイオマスエネルギー市場(エネルギー供給量)は、金額ベースで2016年度の2930億円から、2017年度には前年度比31.9%増の3864億円、2020年度に6576億円と倍増し、2030年度には9864億円に拡大すると予測している。その中で多くを占めるのがバイオマス発電市場であり、2016年度の1989億円から2017年度には前年度比40.9%増の2803億円、2020年度に5360億円、2030年度には8486億円に達すると予測する。

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