EV化の波は二輪にも、電動バイクの最前線電気自動車(1/2 ページ)

「東京モーターサイクルショー」では、モーターとバッテリーが動力源となる電動バイクの存在感が強まっていた。スクーターからレースマシンまで、電動バイクの“現在地”を紹介する。

» 2018年03月28日 09時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]

 スペースや重量の制約が厳しく趣味性の高い乗り物でもあるバイクは、四輪の自動車と比較して電動モデルが普及しているとは言い難い。しかし、「第45回東京モーターサイクルショー」(2018年3月23〜25日、東京ビッグサイト)では、内燃機関を搭載する従来のバイクに交じりつつ、モーターとバッテリーが動力源となる電動バイクの存在感が強まっていた。

 本稿では、同ショーで展示された電動バイクの中でワールドプレミアとなった2車種を抜粋して紹介し、スクーターからレースマシンまでを俯瞰(ふかん)して電動バイクの“現在地”を探る。

車両単体だけでなく、バイクの電動化プラットフォームを提案するKYMCO

 台湾の二輪車メーカーKYMCO(キムコ)は、電動バイクのプラットフォーム「Ionex」を披露した。Ionexは電動バイクを核として、取り外し可能なメインバッテリー、家庭用の普通充電器や、自動販売機サイズで予備バッテリーのレンタルなども行える公共設置用の急速充電器といった各種ツールを包括する。同社では、Ionexをバイクの電動化を押し進めるエコシステムと位置付けている。

左:Ionexで利用されるメインバッテリー 右:Ionexの公共設置型急速充電器(クリックで拡大)

 Ionexプラットフォームの電動バイクは、メインバッテリー2個と取り外し不可能なコアバッテリーを搭載し、メインバッテリーの充電が切れた場合でもコアバッテリーにより「街中を1時間走る程度」(同社担当者)の走行が可能。これにより、街中に設置された急速充電器にメインバッテリーを預け、コアバッテリーによる近距離走行の後に充電されたメインバッテリーを回収できることで、ライダーに充電を待つ時間を減少させた。

 またIonexでは、バイクに搭載するメインバッテリーの仕様などをオープンソース化、他社へ情報提供を行うことでエコシステムを成長させる。また、情報提供を受けるメーカー側にもバッテリーの開発コストを削減できるメリットがあり、各社独自の持ち味を生かした車両開発に専念することが可能となる。同社もIonexを活用した電動バイクを積極的に展開する予定であり、今後3年間で10モデルを発表し累計50万台の販売を目標としている。

Ionexの小型スクーター「Many EV」(クリックで拡大)

 同時に展示されたIonexプラットフォームの電動バイク「Many EV」は、出力3.2kW(キロワット)のモーター、容量650Wh(ワット時)のメインバッテリー、同625Whのコアバッテリーを搭載し、最高速度は時速60km、同社が公称する航続距離は60kmとなる。また、メットインスペースに急速充電器からレンタルできるメインバッテリーを3本収納することが可能で、この場合の航続距離は200kmを超えるという。

 幅広いスクーターのラインアップを持つKYMCOは現在102カ国に販売網を有し、特に地元台湾やスペインではマーケットシェア1位であるなど、アジア・欧州で一定の認知度があるという。Ionexは、2018年内にKYMCOが得意とするマーケット20カ国でローンチする予定で、この中に日本が含まれているかは非公開としている。

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