IoTで水力発電を効率化、年間3000万kWhの発電量アップを目指す自然エネルギー

関西電力がIoTやAIを活用してダムにおける水力発電所の発電量アップを目指す研究開発を開始。年間最大約3000万kWh(キロワット時)の発電量の増加を目指す。

» 2018年09月28日 09時00分 公開
[スマートジャパン]

 関西電力は、IoT技術を活用し、水力発電所におけるダムへの流入量予測精度を上げることで、水力発電所の発電電力量を向上させる発電運用効率化技術の研究を本格的に開始した。

 降雨・降雪が多く、水系全体としての総発電電力量の増量が期待できる黒部川水系をモデル地点とし、IoTやビッグデータ分析、AIなどのデジタル化技術を活用し、水系一貫の運用を実施している水力発電所群に対して「流入量予測技術の高度化」「水系全体で発電電力量の最大化」など運用効率化、発電電力量の増加検討に取り組む。

 具体的には、気象工学研究所(大阪市)、総合建設コンサルタントのニュージェック(同)と共同で、従来の動的計画法に基づく発電運用計画技術に加え、これまで活用されていなかった気象観測データを利用した降雨・積雪・融雪量の予測結果を考慮することで、水系に流れ込む水量や時期の予測精度を向上させる。それにより、発電所や発電関連設備を新規設置、増強などをすることなく、運用方法の改良により発電電力量の向上を目指す。

研究開発のイメージ 出典:関西電力

 モデル地点となる黒部川水系は関西電力が12カ所の水力発電所を設置しており、今回の研究では1%増に相当する年間最大約3000万kWh(キロワット時)の発電量の増加が見込まれている。

 研究では気象工学研究所がIoT技術を活用したリアルタイムデータ取得システムの構築、観測データの活用による積雪・融雪モデルの構築および高精度気象予測情報を活用したダム流入予測シミュレーションを実施する。

 ニュージェックは積雪・融雪モデルの導入による既存ダム流入量予測モデルの高度化や予測流入量を活用した発電運用最適化システムの構築に取り組む。

 関西電力はフィールド(実機)を活用した試験と発電運用効率化効果の評価、実用性の検討を担当する。

 研究期間は2019年3月まで。なお、同研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業として、受託事業者の採択を受けている。

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