「この絵、生成AI使ってますよね?」──“生成AIキャンセルカルチャー”は現代の魔女狩りなのか 企業が採るべき対策を考える(2/4 ページ)
こちらもきっかけは、X上での指摘だった。2023年5月、あるXユーザーが、ファンタジー系作品などで知られる人気小説家のサラ・J・マースさんの著書「House of Earth and Blood」の表紙に疑問を投げかけたのである。
このポストで説明されているのは、何人かのXユーザーの調査結果をまとめた内容なのだが、それによると、投稿が行われた週、英国のブルームズベリー・パブリッシング(「ハリー・ポッター」シリーズも手掛ける大手出版社)からHouse of Earth and Bloodの新しいバージョンが発行された。
すると彼らは、通常であれば表紙をデザインした人物のクレジットが表記される場所に、Adobe Stock(アドビが提供するストックフォトサービス)としか表記されていないことに気付いた。
さらに調査したところ、この画像のオリジナルは、Adobe StockにAI生成画像を売っているとみられるユーザーにより作成されたことが判明。ブルームズベリー・パブリッシングは、このオリジナル画像に少し手を加えただけで、表紙に使用していたのである。
ただ、オリジナル画像が生成AIを使って作成されたものかどうかは定かではなかった。指摘したXユーザーも“免責事項”とした上で「確固たる証拠は無く、AIを使用した画像に見られる典型的な特徴が確認された」だけだとしている。
またAdobe Stockを出版社が使用することについても、それが直ちに法的な問題を発生させるものではない(ライセンスの種類によって、クレジット表記の要否や加工の可否などが変わるため、何らかの問題が存在している可能性は残るが)。さらに言えば、Adobe Stockでは一定の基準(生成AI利用を明示するなど)を設けた上で、生成AIを使用して作られた画像をクリエイターが提供することを認めている。
問題があるとすれば「生成AIが使用されたとみられる画像を、生成AI利用を明示せずAdobe Stockに提供していたユーザーがいる」という点だろう。批判の矛先を向けるのはそのユーザー、もしくは疑わしい画像をチェックしてこなかったアドビと考えるべきではないだろうか。
念のため、現時点でオリジナルと指摘されたAdobe Stockの画像を確認したところ、AIを使って生成したことが明記されていた。
この表記がいつ追加されたのか定かではないが、騒動の発端となったXユーザーが一切触れていないことから、指摘された後に修正されたのだろう。
いずれにしても、出版社側が何らかの法的な違反を犯している明確な証拠は見られない。しかし前述のユーザーは、最初の投稿に続くスレッドの中で「それでは、何ができるでしょうか?」と述べた上で「あなたがお金を使って積極的にサポートしたいコンテンツを考えてください」や「アーティストの著作権と作品を保護する法律が整備されるまで、AIで生成したコンテンツの使用やサポートは控えてください」など、生成AIを使用した商品のボイコットとも取られる発言をしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
2
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
3
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
-
4
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
5
SIE、PS5向けAI採用画質向上技術「QSSR」発表 AMDと共同開発、「Marvel's Wolverine」と「Ghost of Yōtei」が初対応
-
6
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
7
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
-
8
ChatGPTにAIでバーチャル試着機能とカメラでの書類スキャン→PDF化機能
-
9
Google、「Gemini 4 Pro」ではなく「Gemini 4 Argon」発表 まずはサイバー防御組織に限定提供、出力上限は100万トークンに
-
10
Rails作者DHH「Pencils Down、もう手でコードは書かない」 それでもソフトウェア開発の未来は明るい理由
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR