DMM.comの生成AI活用事例 23卒新入社員がAI推進を主導 問い合わせ業務を月163時間削減した裏側(1/2 ページ)
生成AIによるイノベーションにひかれ、さまざまな企業で生成AI活用が進んでいる。DMM.comもその一つであり、同社はその中心人物に2023年卒の新入社員を起用している。どのような経緯を経て、そのような体制へと至ったのか。
DMM.comが生成AIを活用しているのは、カスタマサポート部だ。同社が手掛ける30以上のサービスの問い合わせ業務を一手に担う同部門では、月平均2万7000件の問い合わせに対応している。しかし、そのうち約3割を占める電話問い合わせデータについては録音を保存し手動でメモを取るのみ、データを有効に活用できていなかった。
そんな中、23年卒社員が生成AI活用を主導し、オペレーター向けのAI基盤を構築。23年7月に導入し、月163時間の時間短縮に成功したという。ITmedia AI+ではDMM.comに取材し、AI活用の裏側に迫った。
きっかけは大規模言語モデルへの興味
DMM.comのAI活用を推進した23年卒社員は、同社プラットフォーム開発本部CSPチームでバックエンドエンジニアを務める渡部大基さん。入社後の研修を受ける中、大規模言語モデル(LLM)の話題が出たことからAIに興味を持ち、パブリッククラウド上でどのようなAIサービスができるか勉強を始めたという。現部署への配属が決まった際、上長の推薦もあり、配属先でのAI活用を主導することになった。
渡部さんはAI活用担当に就任後、オペレーター向けのAI基盤をイチから作成。約1カ月でこれをリリースした。これまでは電話対応後にその内容や、顧客の要件をオペレーターが手動でメモしており、記入には1件当たり約160秒の時間がかかっていた。そこでAIを使って通話音声を自動でテキスト化し、さらにその内容を要約させる仕組みを構築した。
結果、電話内容を記録する時間が不要になり、1件の電話対応に掛かる時間を約45秒短縮でき、月平均では約93時間の効率化に成功したという。またこのAI基盤は現在、メールでの問い合わせにも活用し、約70時間の時間短縮に成功。メールでの問い合わせ内容の要約作成業も短縮でき、さらに問い合わせ内容の把握が容易になったとしている。
入社1年目で社内のAI推進を担当することになった渡部さんは「新卒である意味怖いもの知らずだったのかもしれないが、素直にワクワクした」とし「プロジェクト参加時は、担当プロダクトの全体像を理解しエンジニアとして参加し始めたばかりだったので少し不安はあった」と当時の心境を話す。
「一方で、チームとしても(AI活用は)未知の分野だったため、丁寧に調べることを徹底した。それを上司へ説明することで自身のみならず、結果的にチームとしてAI理解を深められ多くのチャレンジに取り組めた。定期報告などを通して上司には最大限バックアップしてもらい、判断が必要なときに全て説明する必要がなく、スムーズに意思決定してもらった。現地現物、即断即決というスピードの速さで個人的にも驚いた」(渡部さん)
渡部さんは現在、カスタマーサポートからの要望やデータをもとにAI基盤全体の改善・管理する業務を担当している。AI基盤の構築を通して、困難はあったか。渡部さんに質問にすると「高い信頼性と24時間365日稼働するシステムに適応するというのが最初の関門だった。会社のテックリードにプログラムや設計をサポートしてもらうことでその点をクリアすることができた」と話す。
また、このAI基盤ではシステムプロンプトの作成から行ったという。「LLMということで、アウトプットを可能な限りカスタマーサポートが求めている形式に出力するというのが結構大変だった。カスタマーサポートの人たち自身も検証できるような環境を作り、プロンプトの検証をできるようにした。これによってデータとプロンプトを入れるとどのような出力になるのかが事前に把握可能になり、実運用との出力差の乖離が少なくなった」(渡部さん)
このAI基盤は、Azureの環境をメインに運用中。今後拡張する可能性があったため、構築の際には、拡張性が高いクラウドサービスを中心に利用することを意識したという。「こだわった点として、要約環境では直接要約の実行を行う前にキューイング(リクエストをためる行為)を行う仕組みを採用し、大量のリクエストがきた際に、要約ができないリスクを最小限にした」と渡部さん。
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