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まだ早い? 意外と便利? Pixel 9 Pro とGeminiで試す、生成AI時代のスマホアシスタントの“現在地”(4/5 ページ)

» 2024年10月06日 16時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

カメラにも生成AI機能がやってきた

 Pixelお得意のカメラ機能にも生成AIが搭載された。「もうちょっと余白が欲しいな」という時に上下左右を拡張する「オートフレーム」や、ガビガビになりがちな高倍率のデジタルズーム写真を改善する「ズーム画質向上」がそれだ。

 オートフレームは、Adobe Photoshopの「生成拡張」に似た機能で、写真の四隅を生成して余白を広げたり、横で撮った写真を縦に変えたり(逆も可能)できる。アスペクト比を指定して生成できるわけじゃないので狙った画像になるかは“ガチャ”要素があるが、「もうちょっと引きで撮れば良かったな」「横で撮っちゃったけどインスタ用に縦も欲しいな」を解消する、かゆい所に手が届くような機能だ。

横で撮影した写真に「オートフレーム」を適用すると3パターンの画像を生成
縦構図に拡張した画像がこちら

 ただ、この拡張部分は「本来写っていたかもしれないもの」であり、そこに存在していたものを復元しているわけではない。その点に留意して使いたい機能だ。

 そしてもう一つのズーム画質向上だが、こちらはちょっと評価が分かれそうだ。ガビガビになりがちな20〜30倍のデジタルズーム画像をクッキリ補正できるのがウリだが、使ってみると多くの写真で「クッキリしたオリジナルに近い何か別のもの」が生成されてしまう。質の低いデジタルズーム画像がソースなので仕方ないが、一見まっすぐに見える建造物のディティールが歪んでいたり、本来存在しない模様が追加されたり、写真版「不気味の谷」に似た感覚に陥る。

ガッツリβ版の「ズーム画質向上」

 もともとGoogleは、スマートフォンのカメラをコンピュテーショナルフォトグラフィーで進化させた張本人であり、生成AIは機械学習アルゴリズムの発展と考えているのかもしれない。ただ、センサーから取り入れた情報を基に本来見えているはずのものを推定する従来のコンピュテーショナルフォトグラフィーと違い、生成AIのアプローチは写真そのものを“再生成”していると言ってよい。これを「写真です」と出されるのは少し違和感がある。

【クリックで拡大】「ズーム画質向上」がうまくハマった例(左がオリジナル、右が適用後)。よく見れば元の建材にはなかったであろう僅かな歪みが確認できるが、それよりもクッキリシャープになった印象のほうが大きい。筆者的には「ギリOK」の範疇。これ以上ディティールが歪むとNGになってくる
【クリックで拡大】こちらは「ズーム画質向上」が全くハマらなかった例(左がオリジナル、右が適用後)。パッと見同じだが、潰れているディティールを補おうとしているのか、建造物には存在しない模様が大量に発生しており、クレーンも「クレーンらしき何か」に変質してしまっている。「明治大学」の例はデジタルズームで被写体を大きく写せたのでディティールが残っていた一方、高層ビルの例は、遠くの物をデジタルズームで無理やり撮影しており被写体にディティールが残っていない。この辺も影響していると考えられる

 とはいえまだβ版の機能なので、改善が進めばオリジナルの造形を保ったまま出力できるようになる(=不気味の谷を突破する)可能性もある。そうなれば違和感も薄れ、生成AIが画像処理エンジンのように使われるようになるかもしれない。ただ、そこまで来ると「写真ってなんだっけ?」という別の話にもなってくるのだろうが……。

 余談だが、このズーム画質向上機能、実はオンデバイスで動作しており、現時点でTensor G4のTPUパワーを感じ取れる数少ない機能でもある。20倍〜30倍あたりのデジタルズームはRAWデータだとXGA〜VGA相当の解像度なので、この辺りならクラウドを使わずともSoCで画像生成AIをぶん回せるのだろう。オートリフレームは高解像度の写真を拡張させるためか、Googleフォトにアップする必要がある。

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