年明けの米国を連続して襲った無差別殺傷事件とテスラ車爆発事件。捜査が進むにつれ、容疑者が犯行に至った経緯などが徐々に分かってきた。
米ネバダ州ラスベガスでテスラのサイバートラックを爆発させた男は米OpenAIのChatGPTと対話しながら綿密な計画を立て、米ルイジアナ州ニューオーリンズでトラックを暴走させた男は米Metaのスマートグラスを着用していたことが判明。テック大手各社が開発にしのぎを削る最先端ツールが、凶悪犯罪に悪用される現実を見せつけた。
報道によると、事件はいずれも現地時間の1月1日未明に発生。ラスベガスのトランプホテル前にサイバートラックを停めて爆発させたマシュー・リベルスバーガー容疑者(37)は、直後に自分を銃で撃って自殺した。同容疑者は米陸軍特殊部隊グリーンベレーに所属する現役兵で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたという。
ラスベガス警察のその後の調べで、リベルスバーガー容疑者は犯行の計画にChatGPTを利用していたことが分かった。ChatGPTと会話していたのは2024年12月27日。容疑者は爆発物の調達方法やその威力、どんな銃を使えば点火できるかなどを質問し、ChatGPTは、指定の爆発物を銃で撃って点火させるために必要な発射速度などを回答していた。
捜査当局が公表した資料によれば、容疑者はChatGPTとのやりとりの中で、こんな内容を質問をしていた。
「デンバーで最大の銃器店の場所」
「スミス&ウェッソンモデル500の速度」
「それでタネライトを爆発させられるか」
「1ポンドのTNTに匹敵するタネライトの量」
「50口径のデザートイーグルピストルで爆発させられるか」
「どのピストルを使えば爆発させられるか」
「どんな弾丸を使えば確実か」
「至近距離から爆発させるには」
ラスベガス警察の捜査員は、「容疑者は最終的にChatGPTとの会話を通じ、自分の爆薬を全て爆発させるためには、少なくとも秒速609m以上の銃が必要だと判断した」と指摘する。
爆発の状況は容疑者がChatGPTとやりとりした内容と一致しているという。警察はこれまでの捜査から、容疑者が銃を撃って火花でトラック内の燃料蒸気や花火導火線を発火させ、花火や他の爆発物を爆発させたと見ている。
米メディアThe Vergeによると、犯行の計画にChatGPTが使われたことについてOpenAIは「当社のモデルは有害な指示を拒み、有害コンテンツを最小限に抑えるよう設計されている」とした上で、今回のケースについては「ChatGPTは既にインターネット上で公開されている情報で対応し、有害または違法な行為に対しては警告した」とコメントしている。
一方、新年を祝って大勢の人でにぎわうニューオーリンズの繁華街フレンチクォーターにピックアップトラックで突っ込んだ男は、Metaのスマートグラスを装着していた。
この事件では14人が死亡し、35人が負傷。元陸軍兵のシャムスディン・ジャバール容疑者(42)は、トラックから降りて警察と銃撃戦になり、射殺された。
米連邦捜査局(FBI)によれば、ジャバール容疑者は米テキサス州ヒューストン在住で、10月30日から数日間ニューオーリンズに滞在していたことが分かっている。この時はMetaのスマートグラスを着けて自転車を走らせ、フレンチクォーターの様子を記録していた。
1月1日の犯行時にもMetaのスマートグラスを着けていたが、ライブストリーム機能は作動させていなかった。グラスは死後のジャバール容疑者から見つかった。
スマートグラスは21年にMetaがRay-Banとコラボで発売した製品で、写真や動画の撮影ができる他、ライブ配信機能も搭載している。
ニューオーリンズの事件に使われたフォードのピックアップトラックも、ラスベガスで爆発したサイバートラックも、カーシェアリングサービス「Turo」でレンタルした車だった。
リベルスバーガー容疑者は米陸軍の現役兵、ジャバール容疑者は元兵士。2人はノースカロライナ州にある同じ基地に所属していたことがあり、09年にアフガニスタンに駐留していたことも分かっている。それでも両容疑者の接点は、これまでの捜査では確認されていない。
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