本稿では定期的にAIと日本語入力の関係について、新しい取り組みを取り上げている。過去にはazooKey on macOS、Copilot Keyboardを取り上げたところだが、今回は日本語変換エンジンとしては老舗である「ATOK」を取り上げる。
現在ATOKは単品買い切りのモデルではなく、サブスクリプションサービスとなっている。例年2月にWindows版に新機能が追加され、6月にほかのOSへ展開するといったスケジュールでアップデートが続けられている。
今年も2月に新機能が追加されたVer.36が登場したところだが、それに先立って1月に新料金体系が発表された。従来はベーシックとプレミアムの2本立てだったが、2026年よりプレミアムへ1本化された。従来ベーシックプランは月額300円、プレミアムプランは月額600円なので、ベーシックプランの利用者にとっては2倍の値上げとなる。一方プレミアムプランのユーザーは、そのままだ。
とはいえ、これまでご紹介した2つのAI対応日本語入力システムは現在のところ無料で利用できる。有料の入力システムは、それなりの利便性を示さなければならないということになる。
今回はWindows向けの最新版であるATOK Ver.36をインストールして、入力効率およびAI対応となった新機能をテストしてみたい。
Ver.36の新機能として最初に紹介されているのが、生成AIを活用したクラウド型文書制作補助ツール、「ATOK MiRA」である。これは日本語入力システムとは別に動作するアドオンツールだが、プレミアムプランには標準で搭載される。
呼び出しショートカット、Shift+Ctrl+Mで別ウィンドウが開く。ここにテキストをコピペするか、変換の確定前に上記のショートカットを押すと、入力中のテキストがウィンドウに入力される。
例えば上記の文章をウィンドウ内にコピペすると、「より丁寧に」「より詳細に」といった選択肢が表示される。例えばより丁寧にを選択すると、丁寧な表現に文章を書き換えてくれる。「適用する」ボタンをクリックすると、執筆中のアプリ内にこの文章が入力される。
いわゆる言い回しを修正してくれる機能だ。カスタムの言い回しにも対応しており、例えば『語尾に「にゃん」を付けたネコ語に変換してください。』といった指示も可能だ。またこうした指示はプリセットに加えることもできる。
ビジネスにおいて部下への指示と取引先へのメールとでは、同じ内容でも当然書きぶりを変えることだろう。この機能を使えば、たとえ箇条書きによる指示でも、書きぶりを書き換えてくれる。いちいち相手によって書きぶりを変えるのが面倒という人には、便利な機能だろう。
ただ言い回しの選択を間違うという事故も起こり得る。取引先に対してやけに馴れ馴れしい文体で送ってしまったりすると、後でしどろもどろに自分で謝罪文を書く羽目になる。送信する前に十分な確認が必要だ。
こうした機能の実装は、ATOKが最初ではない。先にご紹介したazooKey on macOSでは昨年2月のv0.1.0-alpha.12の時に「いい感じ変換」として、米OpenAIのAPIを呼び出す格好で同様の機能を実装している。
ただATOKの場合は、ユーザーが選択したジャンルを指定してAIで生成できるように、「わたしらしく」というパラメータとして実装した。これにより、普段の文章の傾向から大きく外れた唐突感がないよう、調整されるというわけである。
一方で長文を書きたい人にとっては、「見出しを付けて」といった機能は有用だろう。本文は書けたが、見出しをどうするかは、我々職業ライターでもしっくりくるものを考え出すのは時間がかかるところである。
ただ、このウィンドウにコピペできる文章量は、300文字に限られる。これはモノカキにとってはかなり少ない。例えば本稿の導入部分ぐらいの文章量でも700文字ぐらいある。
また使っていると、「今日の利用可能量」というグラフがどんどん減っていくのも気になるところである。これがいわゆる1日分の生成AI利用トークン量ということだ。1日あたりの上限は1万トークンで、日本語文で約1万2500文字相当、英語文で約5万文字相当となっている。
一度に変換できるのが300字程度なので、日本語では300字フルで40回ぐらい使えることになる。1日で使える分量としては妥当なところだが、気に入らないからと何度もやり直しさせていると、使いきってしまう。使い切った場合に追加購入できるわけでもないので、頼り切っていると行き詰まる可能性もある。
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